人間誰しも“老い”には勝てないものだが、漫画に登場する老人たちは歳をとってもなお、意外な凄技で我々を驚かせてくれる。一線を退いてもなお衰えることのない、老人キャラクターたちの凄まじい活躍の数々について見ていこう。
■武道への“感謝”によって開花する念能力の圧倒的実力『HUNTER×HUNTER』アイザック=ネテロ
1998年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載が開始され、その高い人気から今もなお多くのファンを獲得している冨樫義博氏の『HUNTER×HUNTER』。
とうに100歳を超える老人でありながら、圧倒的実力で活躍を繰り広げたのが、ハンター協会及び審査委員会の会長であり、“心源流拳法師範”でもあるアイザック=ネテロである。
見た目こそ普通の老人で、他人にちょっかいをかけたり、女性のお尻に惹きつけられたりと助平な一面もあり、どこか俗っぽい性格が目立つ。だが一方で、世間からは“最強の武人”として知られている大人物でもあるのだ。
彼の実力が本格的に披露され始めたのは“キメラ=アント編”からで、作中ではネテロが武人として“覚醒”を果たした強烈なエピソードが描かれていた。
46歳当時、ネテロは武人としての限界を感じたことで、武道そのものに“感謝”することを決意。気を整え、祈りを込めて繰り出す丁寧な“正拳突き”を、毎日1万回繰り返すという修練を始める。
この“感謝の正拳突き”を続けることで、彼は音を置き去りにするほどの超音速の拳を手に入れ、さらに“祈り”を昇華させた念能力・“百式観音”を会得することとなった。
ネテロの掌の型によって観音像が攻撃を繰り出す……と、能力の内容自体はいたってシンプル極まりないのだが、注目すべきはその“速度”で、なんと1分で1000回以上の攻防を実現するなど、まず常人では発動から被弾までを認識することすらできない。
作中ではこの圧倒的な能力を武器に、最強クラスの敵キャラである蟻の王・メルエムと壮絶な戦いを繰り広げた。
そのエピソードの強烈さや、セリフや立ち回りのインパクトの大きさゆえ、作中でも非常に知名度の高い老人キャラクターといえるだろう。
■料理の腕も、バトルの実力も“伝説級”!『トリコ』節乃
2008年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された島袋光年氏による少年漫画『トリコ』は、熱いバトル描写だけでなく、作中で主人公たちが追い求めるさまざまな“グルメ食材”の描写も見どころの一つだ。
本作には食材を調理する“料理人”が多数登場するが、なかでも「美食人間国宝」としてその実力を讃えられているのが、伝説の女性料理人・節乃である。
周囲からは「セツ婆」などの愛称で慕われている老婆で、大きくまとめた桃色の髪の毛と優しく目を細めた笑顔が特徴的だ。
腰の曲がった現在でも「節乃食堂」を経営しているものの、開店するかどうかは“食材の気分次第”と、なんとも気まぐれだ。だが、彼女の料理を求める客は多く、なんと10年先まで予約が埋まっているなど凄まじい人気を誇っている。
一見すると戦闘には不向きな人物なのだが、実は節乃は料理だけでなくバトルにおいても常軌を逸した実力を秘めていた。
彼女の実力が発揮されたのは、“センチュリースープ編”。激闘によって疲弊した主人公・トリコらにとどめを刺すため、“美食會”の幹部・アルファロが駆け付けるのだが、ここで節乃はまさかの登場を果たす。
当初は穏やかな言葉でその場を収めようとするが、アルファロはそんなことで退くつもりもなく、背を向けた節乃を得意武器である投擲用の“皿”で攻撃しようとする。
だが、これに対し節乃は背を向けたまま、鬼の形相を浮かべ「しまいなさい…」と一喝! その凄まじい殺気はアルファロを怯ませただけでなく、彼の持つ皿をすべて砕き割ってしまうほどであった。
敵を“気迫”のみで退けてしまう彼女の活躍は、それまで読者たちが抱いていた“優しい老婆”というイメージを一変させてしまったことだろう。穏やかな見た目に圧倒的な戦闘能力を隠し持った、なんとも驚きの老人キャラクターだ。