■ブリーフ一丁で窓際に仁王立ち!『ゴルゴ13』デューク東郷
さいとう・たかを氏による『ゴルゴ13』(小学館)は、1968年に連載を開始し、2021年には「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」というギネス世界記録にも認定された。残念ながらさいとう・たかを氏は2021年に亡くなってしまったが、その後もさいとう・プロダクションの手により連載は継続しており、さらにその記録を伸ばし続けている。そんな『ゴルゴ13』の主人公は国際的スナイパーである「ゴルゴ13」ことデューク東郷だが、長い連載期間の中で、実は彼もキャラ変をしている。
記念すべき第1話「ビッグ・セイフ作戦」で初登場したデューク東郷は、いきなりパンツ1枚で窓際に立ち、手には煙草を持っている。その姿はどこかシュールで、のちにお馴染みとなる冷静沈着な殺し屋としての雰囲気は感じられない。そして、背後に立った娼婦をいきなり殴りつけ、警察から逃げる羽目になってしまうところもどこか間が抜けている。しかも現在では見られないほど表情が豊かで、依頼人に対してペラペラとおしゃべりをしている。これには「こんなに軽いキャラだったの?」と驚いてしまう。
そんなデューク東郷も連載を重ねるうちにキャラ変を遂げて寡黙になっていき、背後に立たれないように背中を隠すようになるなど、物腰にも慎重さが現れるようになる。眼光も鋭く表情には威圧感すら感じられるその姿からは、同一人物であるはずの初登場時の様子を想像することも難しいだろう。誰もが知っている作品、誰もが知っているキャラクターではあるが、長い作品だけに第1巻を実際に読んだことがある人は意外と少ないはず。気になった人はぜひ読んでみてほしい。
1人のキャラクターが、その初登場時とそれ以後とで大きな変貌を遂げる、いわゆる「キャラ変」にはいろいろなケースとそれぞれの理由があるが、漫画とはそうした整合性を犠牲にしても、その時々での「面白さ」を優先したほうが結果的にいいものになったりするものだ。そういう意味では、キャラ変は作品にスパイスを加え、より楽しませる要素になっているとも言える。そういえば自分の推しのキャラクターの初登場はどんなだったかな……とたまに読み返してみるのもいいかもしれない。