■熱い人物だらけの主人公たち
さて、そんなことを言いながらも、複数の主人公が運命に導かれていくのが本作の面白いところ。
3人目に紹介するのは、ウイルス研究の第一人者・大沢賢治。
急にめちゃくちゃヤバそうな人が出てきましたが、彼もれっきとした主人公です。彼は自分の人生における欲が非常に薄い人物で、これまでとにかくウイルスの研究に没頭してきました。
しかしそんな仕事人間だった彼ですが、自分の娘が誘拐されたことでこの事件に深く関わることとなります。そう、この渋谷で起きた誘拐事件の被害者はこの大沢の娘なのです。
仕事人間だった彼は、この事件を通して自分の人生を見直していきます。こういう偏屈な大人がハートフルに汗をかくのってグッときませんか。序盤こそ読んでいて退屈だなと思っていた大沢のストーリーが、後半はもう早く読みたくて仕方なかったです。しかしゲームシステム的に、全員を1時間ずつ進めていかないといけず……! 本当に後半はハラハラさせられっぱなしでした……!頑張れ!お父さん!!
4人目はフリーライター・御法川実(みのりかわみのる)。
渋谷のダジャレでネーミングされている『428』という作品ならではのネーミング、と思いきや、実は彼は他作品『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』という別のノベルゲームからのゲスト参戦的なキャラクターです。
ちなみに『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』で脚本を務めた北島行徳さんが、『428』でも脚本を手掛けております。
この御法川、通称ミノさんはやたら態度はでかいものの義理人情に厚く、正義感の強い人物で、元上司である頭山の借金返済のために今日中に原稿を書き上げなければいけないという状況で事件に巻き込まれます。
加納・阿智に比べれば決して日の目を浴びるタイプの主人公ではありませんが、正直彼無しではこの作品はもっと暗いものになっていたでしょう。今作のコミカル担当ながら、その熱い男気に惚れた人も多いはず。ここまでで分かる通り、『428』の主人公は全員熱いです。
最後、5人目の主人公は着ぐるみ・タマ。
駅前で「バーニング・ハンマー」というダイエット飲料の試供品を配っているアルバイトです。
雑貨屋で見つけたネックレスをなぜかどうしても手に入れなければいけないと感じ、バイトを始めることにしたタマは、はたしてバイト代でネックレスを手に入れられるのでしょうか……!?
という明らかに異色な5人目ですが、そもそも着ぐるみという時点で怪しさ満点ですよね。こういう読み物系のゲームにおいて、顔が隠れている人物は絶対に後々大きな伏線回収がありますもんね。
ただ、意外とタマの正体はプレイしていたら何となく想像できますし、中盤すぎくらいで明らかになります。というか明らかになってからが面白いんです。
本当にこのゲームは物語の中枢が姿を現した後に、どんどん面白くなるのがすごいところで、多くのストーリー系のゲームがこのネタバラシや伏線回収で見せ場を作るのに対し、『428』はネタバラシが終わった後に真価を見せてくれるので、最後までちゃんと飽きずにトップスピードで楽しみ切れました。