「4月28日」という数字の並びを見ると思い出すゲームがあります。それはチュンソフトが開発し、2008年にセガから発売されたサウンドノベルゲーム『428 封鎖された渋谷で』です。
私ヤマグチクエストはこの『428』が大好きで、テレビ東京系のゲーム番組『勇者ああああ』に出演した際に作品の魅力をプレゼンしたこともありました。今回は改めて、私にとって非常に思い出深いこの『428』を振り返りたいと思います。
■名作『街』の10年後の渋谷を舞台に、5人の運命が交差する…
サウンドノベルゲームと言えば、という流れでよく名前が挙がる名作『街』の10年後の渋谷が舞台である本作。
たびたび「続編」とされることもありますが、あくまで独立した作品であり、『街2』では決してありません。伊坂幸太郎さんの作品に近いような関わり方で、別作品の小ネタが作品中で言及されるというようなことはあっても、それぞれは別の作品、といったイメージでしょうか。
両者はシステム的には似ているのですが、主人公8人がそれぞれ独立した物語の登場人物であるような印象を受ける『街』(それが作品のよさでもある)に対し、『428』は主人公が最終的に関わりあって物語を進めていく感覚が強いのが特徴です。
また文章のアクが強すぎないため、人を選ばないような作品になっていると思っています。『勇者ああああ』であえて『街』ではなく、『428』を紹介したのはそういった理由もありました。
■4月28日に渋谷で発生した誘拐事件
では、『428』のあらすじをご紹介したいと思います。
200X年の4月28日に渋谷で発生した誘拐事件をきっかけに、世界を震撼させるような大事件が始まります。この事件を5人の主人公の視点から追いかけていく、怒涛の物語。時間にしてたった10時間という時間経過で、これだけ人間の葛藤や想いを描き切るこのスピード感にきっと圧倒されるでしょう。
主人公は5人。まずは、新米刑事・加納慎也。
情熱にあふれたいわゆる『ジャンプ』の主人公タイプのキャラクターで、正直大好きでした。とにかくまっすぐだし、加納ならこうするだろうなと思うような選択肢を選んでしまいがちでしたね。
彼の特徴は、尊敬している建野京三の言葉を常に「デカ魂メモ」に書き留めており、その言葉を胸に勤務に当たっていること。
直情型なのでとにかく分かりやすく突っ走るタイプだからこそ、選択肢も明らかに失敗しそうなものが多く、本当に何度もバッドエンドになりましたが、そもそもそういうゲームなのでむしろ加納っぽくてほほえましいことも多々ありました。
たとえばもう一人の主人公である遠藤阿智を、犯人の外国人だと勘違いして誤認逮捕してクビになったり、空腹時に飲んではいけないドリンクを飲んでしまったり、など分かりやすいトラップだらけですが、それも加納らしいところでした。事件と密接にかかわる刑事だからこそ、加納の周りの人物も好漢が多く、とくに建野さんと加納の関係性はぜひその目で見てほしいですね。
そして、先ほど話に出てきた主人公・遠藤阿智。
渋谷の不良グループ「KOK」のヘッドだったが半年前にグループから足を洗い、今は街のゴミ拾いをしている。チンピラっぽい見かけによらず心の優しい青年で、『SLAM DUNK』で言うと流川や三井のような、主人公ではないのに人気があるキャラクターのような雰囲気があります。阿智の場合は主人公なんですが。
この阿智の父・大介や妹・鈴音など、彼を取り巻くキャラクターたちがこの作品の価値を強烈に高めたと言っても過言ではなく、とくに妹の鈴音にまつわる短編が最高なのでぜひ本編クリア後も最後まで楽しんでいただきたいです。
阿智と加納の2人が序盤は話をリードしていくので、プレイヤーはどちらかに感情移入しながら進めていくことが多いのかなと思うのですが、既プレイの方はどちらが好みだったんでしょうかね。ちなみに僕は完全に加納派でした。真エンドも彼にフォーカスされてるし、王道的な主人公はやっぱり加納なのだなと。