『まんが日本昔ばなし』「もの言わぬお菊」に「雪むかし」も…救いがなさすぎる“とことん悲しかった話”の画像
アニメ『まんが日本昔ばなし』Blu-ray第1巻 (c)2023 愛企画センター

 1975年から1994年までTBS系列で放送された『まんが日本昔ばなし』。日本各地の昔ばなしをアニメーションにし、市原悦子と常田富士男がそれぞれ何役ものキャラを演じ分け声を乗せるという方法で制作された人気テレビアニメだ。ポピュラーな昔ばなしから、郷土に根付いたマイナーなものまで多岐にわたり網羅する本シリーズのなかには、ときに悲しすぎる結末をむかえたエピソードもあった。今回はあまりに救いがない“とことん悲しかった話”を紹介していこう。

■話さなくなってしまったお菊に涙…『もの言わぬお菊』

 1992年9月26日に放送された『もの言わぬお菊』は、犀川にかかる久米路橋に伝わる『キジも鳴かずば』という伝説をリメイクして放送された。

 病に倒れた娘・お菊の命が危ないと知り、“あずきまんまが食べたい”という娘の願いをなんとか叶えようとした父親。しかし、貧しい村ゆえにお菊の望みは到底叶えてあげられそうになく、結果父親はひとにぎりの小豆を盗んでしまうのだ。

 父親のおかげで元気を取り戻したお菊だったが、彼女の無邪気な行動がきっかけとなり父親は罪人として捕らえられ、“人柱”として橋の支柱の下に埋められてしまった。

 自分のせいで父親が亡くなったと感じたお菊は、以降固く口を閉ざすようになった。そんな彼女の姿に村人たちも胸を痛めるのだが、エピソードの最後に、鳴き声をあげたために猟師に撃たれたキジを見て、お菊は「お前も鳴かなかったら撃たれはしなかったものを」と目に涙を浮かべてつぶやく。そして、その一言を発してから、彼女は二度と口を開くことはなかったそうだ……。

 幼いがゆえに犯してしまった過ちによって、大切な人を失ってしまうというこの昔ばなし。お菊の願いを叶えてやりたかった父親の気持ちも痛いほどわかるうえ、父親を自分のせいで死なせてしまった彼女が押し黙り続ける姿は、悲しすぎる結末だった。せめてお菊の未来が明るいものであってほしいと、救いを求めずにはいられないエピソードだ。

■雪が白い意外な理由…『雪むかし』

 1989年2月11日に放送された『雪むかし』は、とある北国を舞台に、“雪がまだ本当に白くはなかった”という設定からはじまる。

 主人公は、庄屋に奉公にやってきた働き者の幼い娘だ。ある日、旅のお坊さんが食べ物を恵んでほしいと来るも、庄屋のおかみさんは冷たく追い払ってしまう。見かねた娘はそのお坊さんに自分のご飯を握り飯にして渡し、そのお礼にと、“赤い布”と“鈴”をもらった。

 実は、この“赤い布”は触れたものを美しく変化させる不思議な力を持っていた。しかしそれは娘が使った場合のみ。布を顔にあてた娘が美しい顔になったのを見ておかみさんはその布を娘から取り上げて使うのだが、なんと醜い顔に変わってしまった。怒った彼女に娘は追い出され、大雪のなか故郷を目指しさまようことに……。

 体力も限界をむかえ、倒れこんだ娘が持っていた“赤い布”が雪に触れると、みるみるうちにあたりは白くなっていった。そして、“こうして雪は白くなった”という結末が描かれていた。

 心優しい娘には何も落ち度がないことが余計につらい。彼女はただ奉公先でがんばっていただけなのだが、大人の醜い欲によって理不尽に虐げられ、命を落としてしまったのだ。

 雪が白い理由がこんな理由によるものだとしたら、美しい雪景色を見る目が変わってしまいそうなほど悲しい昔ばなしだった。

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