■悲劇の死を遂げた兄弟…『ふとんの話』
1976年7月24日に放送された『ふとんの話』は、小泉八雲による怪談『鳥取のふとんの話』がもととなっている。新しく開業した宿屋で使っていたふとんから、夜な夜な話し声が聞こえるというこの話。
まるで幼い兄弟が互いにいたわり合うような声が聞こえることから、不思議に思った宿屋の主人はこのふとんを買った古道具屋に話を聞いてみることにした。すると、悲しい最期を遂げた兄弟たちのものだったことが判明するのだ。
貧さゆえにふとんすらも奪われて命を落とした悲しい兄弟のエピソードは、死してもなおお互いをいたわり合う優しさも相まって、涙なしには見ることができない。宿屋の主人が2人の魂を弔ってくれるという結末だけが、せめてもの救いに感じた。
■むかえにきた夫が見たのは…『深んぼのすげがさ』
1987年5月30日に放送された『深んぼのすげがさ』は、『茨城のむかし話』(日本標準刊)をもとにしている。
農家に嫁いだ若い嫁さん。慣れないながらも重労働である農作業に精を出していたのだが、厳しい姑はそんな彼女に小言を言ってばかり。それでも嫁さんが一生懸命働けたのは、優しい夫がいたからだった。
農家にとって、とくに忙しいのが“田植えの時期”。嫁さんは家族のみんなが家に帰っても、夜になるまで田植えをしていた。そんな彼女の働きもあってか、田植えはいよいよ最終段階である“深んぼ”を残すのみとなった。規模はそれほど大きくはないが、足場を踏み外すと底なし沼という“深んぼ”。
嫁さんは日頃疲れている夫を思い、彼を家に帰して1人で“深んぼ”の田植えをするのだが、足場での作業はなかなかはかどらない。ようやく終わりが見えたと思いきや、彼女は足場を踏み外してしまう……。
あまりに帰りが遅い嫁さんを心配した夫が迎えに行くと、“深んぼ”に嫁さんの姿はなく、彼女が使っていた“すげがさ”だけがポツンと浮かんでいた……そんなエピソードだった。
心の綺麗な頑張り屋の人が不幸になる話には、本当に救いがない……。まさにこの話は、ズドンと心が沈むような“悲しすぎる”話だった。
衝撃的な結末が描かれていることもあり、子どもの見る番組ながら救いのない話に切なくなった人も多いのではないだろうか。
これらの“昔ばなし”はそれぞれ土地に根付いた伝説であったり、なんらかの戒めであったりと起源はさまざまだ。そんな貴重な話をゆったりとあたたかく、ときに切なく描いた『まんが日本昔ばなし』。この機会にぜひ、見返してみてはいかがだろうか。