『鬼滅の刃』我妻善逸に『ONE PIECE』ウソップも…“ヘタレキャラ”が意地を見せた名場面3選の画像
『鬼滅の刃』第5巻 [DVD](アニプレックス)

 少年漫画の登場人物たちは、たいていの場合、強くて勇敢でまっすぐだ。どんな困難にも怯まず立ち向かう彼らの姿は輝かしい。一方でそんな彼らとはまるで違って、実力面や精神面で弱さがあったり少しのことで心折れたりする、一言でいえば“ヘタレ”なキャラが登場することも……。

 しかしヘタレキャラは、ときに彼らなりの意地を見せつける。弱くても、卑屈でも、泣き虫でも、それでも勇気を振り絞って戦おうとする姿は、見る者の心を大きく揺さぶるはずだ。その人間臭い姿は、強くて勇敢なキャラとはまた違った魅力を持っていると思う。今回は3つの例から、ヘタレキャラが意地を見せたときのカッコ良さを解説していきたい。

■炭治郎の“命より大切なもの”を懸命に守った…『鬼滅の刃』我妻善逸

 吾峠呼世晴氏による『鬼滅の刃』の主要キャラ・我妻善逸は、逆にあっぱれなくらいのヘタレである。

 彼は異常なまでの小心者かつネガティブ思考の持ち主で、ことあるごとに「死ぬ」と口にする。そのうえ戦場で泣きわめいたり、かと思ったらキレたり、情緒不安定なあまり変顔を披露したりといろいろな意味でやかましく、選び抜かれた鬼殺隊士とは思えないような人間である。

 善逸は眠った状態だと人並み外れた戦闘能力を発揮し、そのときは別人級のかっこよさを見せるのだが、ここで紹介するのはその部分ではない。

 彼は根本的に心優しくまっすぐな人間で、いっさいの打算なく人のために動くことができる。とくに印象的だったのは、まだ炭治郎と出会ったばかりだったころ、禰豆子が入っている箱を守ったシーンだ。善逸はこのとき、“鬼の気配がする”といって箱に襲いかかった伊之助を止めるため、迷うことなくその行く手を阻んだ。そして殴られようが蹴られようが箱を抱きしめて、離そうとしなかったのである。

 しかも善逸は伊之助と同じく、箱の中に鬼が入っていることにもちゃんと気付いていた。下手にかばえば自分も面倒な問題に巻き込まれかねないというのに、彼は考えるより先に行動に出たのだ。炭治郎が箱を「命より大切なもの」と言っていた、たったそれだけの理由で。

 ちょうど直前までは戦闘シーンでギャーギャー騒ぎ、顔芸をかましていたからこそ、そのギャップには思わずじんと来てしまった。アニメ放送が開始される「刀鍛冶の里編」ではほとんど出番なしと思われるが、続く「柱稽古編」、そして「無限城編」ではもっとかっこいい姿を見せてくれるはずだ。彼ととある“因縁の敵”との戦いは、ファン必見だと思う。

■仲間のためなら命を張れる! 『ONE PIECE』ウソップ

 “ヘタレキャラがカッコ良さを見せた場面”と言われたら、尾田栄一郎氏による『ONE PIECE』のウソップを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。

 ウソップは麦わらの一味の狙撃手であり、おもにパチンコを武器にして戦う。彼はすぐれた射撃能力を誇るのはもちろん、手先の器用さを利用して一味の役に立つことも多いのだが、いかんせん臆病者だ。

 戦いの気配を察知するとまず逃げようとし、場合によっては死んだふりでその場を乗り切ろうとすることも。そのわりに自分を大きく見せるためにホラを吹くなど、ビビりなうえに嘘つきでもあるという少々情けないキャラクターだ。

 しかしそんなウソップも、大切なもののためには身体を張って戦うことができる。やはりもっとも印象的だったのは、アラバスタ編のMr.4&ミス・メリークリスマス戦での一場面だろう。

 このときウソップは強敵相手に苦戦を強いられ、あわよくば逃げようとしていた。しかしミス・メリークリスマスがルフィのことを“船長も貧弱”、“身の程を知らねぇバカ野郎”などとバカにした瞬間、彼は豹変する。

 どれだけボコボコにされても立ち上がり、敵の前に立ち続けたのだ。「……男にゃあ!!! どうしても…戦いを避けちゃならねェ時がある………!!!」「仲間の夢を 笑われた時だ!!!!」というセリフも含め、ぐっとくる名場面である。

 ウソップは弱虫で大ホラ吹きだが、ここぞという場面ではたとえ泣きながら震えながらでも必死に戦おうとする。さらに物語が進むごとに、少しずつ頼もしさを身につけ成長していくところも彼の魅力だろう。

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