発展した映像技術によって美麗なプレイ映像が公開される現代のゲームCMと違って、ファミコン時代のCMはそのゲーム内容がイマイチわかりにくいものが多かった。とにかくインパクトに特化したそれらのCMの数々には、当時のお茶の間で大人気だった有名芸能人が多く起用されていたのを覚えているだろうか? 今回は、有名芸能人が起用された記憶に残るファミコンCMを紹介しようと思う。
■たしかに口ずさみたくなるかも?『MOTHER2 ギーグの逆襲』
まずはじめに、当時ジャニーズグループSMAPとして活躍していた木村拓哉が起用された『MOTHER2 ギーグの逆襲』のCMを紹介しよう。
本作はコピーライターの糸井重里氏が監修した人気RPG『MOTHER』の続編に当たる作品で、1994年に任天堂からスーパーファミコン用ソフトとして発売された。
『MOTHER2』のCMは、当時まだ20代だった木村拓哉と、幼稚園生の男の子が喫茶店でドリンクを楽しんでいるところから始まる。
無言でそれぞれのドリンクに向き合っていた2人だが、別の席に座っていたほかの客たちが突然「マーザーツーー、マーザツーー……」と、いっせいに歌いだすのだ。突然の出来事に固まってしまう2人だが、男の子が「兄ちゃんどうしよう?」と問うと、木村拓哉が「俺たちも歌おう」と答え、その奇妙な合唱に加わるのだ。そして「大人も子供も、おねーさんも。」というテロップが表示されたのち、『MOTHER2』のタイトルが表示され、そのCMは幕を閉じる。
ユーモアと不気味さの絶妙な間を突くこのCMは、多くの視聴者に強烈な印象を残したことだろう。加えて、人気急上昇中であった木村拓哉がこのCMに出演したことで、つい画面から目を離せなくなってしまった、というファンも多かっただろうと思う。
前作が人気だったことももちろんだが、木村拓哉が出演していたというだけでも、CMとしては絶大な宣伝効果があったことだろう。
■元祖クソゲー!? 遊び心が隠されたCM「たけしの挑戦状」
続いては、ビートたけしが監修として製作に参加したことでも有名な『たけしの挑戦状』のCMを紹介したい。
1986年、ファミコン用ソフトとしてタイトーから発売された『たけしの挑戦状』。ビートたけしの独創的な発想の数々が盛り込まれた本作品は、当時、前衛的すぎたのか、攻略本なしでの攻略が非常に困難で、いわゆる“クソゲーの代名詞”として今もタイトルが上がることが多い作品でもある。
そんな不名誉な称号を与えられた『たけしの挑戦状』のCMは、ビートたけしが無表情で大根をおろす様子から始まる。このCMには2パターンあり、「あーなたーのたーめなーらどーこまーでもー」と歌うパターンと、「出ろ!」と一言だけを発するパターンがある。
どちらも15秒ほどの尺でそれ以上の内容がない謎のCMなのだが、実は、このビートたけしの行動がゲームの攻略にかかわるちょっとしたヒントだったそうだ。実際には、とあるシーンでIIコンのマイクに向かって言葉を発するという操作が攻略のカギとなる。要は、ビートたけしの遊び心が隠されたCMと言って良いだろう。
しかし、彼のそんな遊び心に、何の情報もなく純粋に気づけた人がいたかは疑問であるが……。このヒントを得られるかどうかこそが、ビートたけしからの本当の挑戦状だったのかもしれない。