■『劇場版 呪術廻戦0』×「一途/逆夢」(2021)
芥見下々氏の大ヒット作品『呪術廻戦』の前日譚を描いた『劇場版 呪術廻戦0』。事故で亡くなった幼馴染・祈本里香の呪いに取り憑かれた主人公・乙骨憂太が、呪いを解いて里香を解放するため、呪術師を目指す物語だ。
疾走感のある16ビートと荒々しいカッティングが特徴的な主題歌「一途」は、本作の見どころでもある激しいバトルシーンを思わせる。実際、映画パンフレットのインタビューによると、作詞・作曲を担当した常田大希は“戦闘シーンのパンチ力や、ピュアでまっすぐな力を描けたら”という思いで制作に臨んだそうだ。
また、乙骨が夏油傑との戦いのクライマックスで里香に告げた「最期にもう一度力を貸して」や「僕の未来も 心も 体も 全部里香にあげる」というセリフは、ほぼそのまま歌詞に使われている。
このシーン、自らを生贄に里香の呪力の制限解除を試みる乙骨に、夏油は「そうくるか‼女誑しめ‼」と言い、乙骨が「失礼だな」「純愛だよ」と返すやりとりが有名だが、もはや「純愛」なのか「一途」なのか「呪い」なのか……。
そういえば、無骨なロックテイストに紛れてはいるが、サビのメロディラインのなんと不気味なことか。映画でも表現されているとおり、ピュアでまっすぐな思いというものは、ときに呪いにもなるということかもしれない。
対照的に、エンディングテーマ「逆夢」はメランコリックなバラードだ。ストリングスやピアノを多用したクラシック要素とグルーヴ感のあるポップ要素を融合したKing Gnuらしい一曲で、乙骨と里香の関係性を示唆する悲しく儚いラブソング。
結婚の約束を交わし、ずっと一緒だと信じていた相手を突然目の前で亡くしたとき、誰しもそれが逆夢であれと願うことだろう。そしてこちらの曲も、“愛”と“呪い”というワードを結び付けた下りがある。五条悟の「これは持論だけどね」「愛ほど歪んだ呪いはないよ」というセリフが、ここでやけに染みてくる。
King Gnuによるアニソンは以上の4曲となるが、2022年に米津玄師が手がけた『チェンソーマン』のオープニングテーマ「KICK BACK」には、常田が共同編曲およびギター・ベースとして制作に加わり、MVにも出演したことで話題となった。
また本日、2023年4月1日からは、常田が主宰する音楽プロジェクトmillennium paradeと椎名林檎がタッグを組んだ「W○RK」をテーマソングに、賀来ゆうじ氏原作『地獄楽』のアニメ放送が始まるとのこと。豪華すぎて涙が出そうになる。PVで曲の一部を聴くことはできたが、こちらも配信リリースは本日から。曲の全貌を知るのが楽しみである。