2019年にリリースされた「白日」の大ヒットを機に、一躍日本のトップバンドとして名を馳せた「King Gnu」。アニメファンのなかには、2018年に放送された『BANANA FISH』を介して彼らの存在を知った人も多いだろう。今回は「アニメ」×「King Gnu」と題して、彼らが名作のために書き下ろした珠玉の名曲について紹介したい。
■『BANANA FISH』×「Prayer X」(2018)
謎のキーワード「バナナ・フィッシュ」を中心に、ニューヨークの裏世界の抗争を描いた吉田秋生氏の『BANANA FISH』。本作は1985年から1994年に『別冊少女コミック』(小学館)で連載された。
主人公のアッシュ・リンクスはストリートキッズのボスであり、冷酷非情な顔を持つ反面、内面には過去のトラウマから来る自己嫌悪や孤独を抱えている。アッシュの心は日本人大学生・奥村英二との関係を通して少しずつ癒されるものの、それは同時に葛藤も生み出し、物語は悲しい結末を迎える。
2018年に待望のアニメ化を果たした本作だが、King Gnuが手がけたEDテーマ「Prayer X」の歌詞やMVは、アッシュの境遇と泣けるほど合致している。自分自身生きる意味や信じられるものが何かも分からない状態で、「仲間の希望=祈り」を一身に受け、本心を隠してボスの役割に徹する……そんなアッシュにとって英二は唯一見つけた光であり、彼自身の祈りだったのだろう。
曲はメロディックなサビに始まり、アンニュイな間奏とAメロへ。その後、Bメロに行くかと思いきや、音の動きが静止したなかで重厚なバスドラムがイン。ボリュームが一気に上がってサビに入るという、なんとも不穏な様相だ。しかしサビのメロディは洗練されており、ギャングという荒廃した環境のなかにあって突出した才能と気品を持つアッシュの存在を思わせる。
ラストのサビの頭では、まるで暗雲のなかに光が差すように、これまでのマイナーコードがメジャーコードへ。これがまた、悲劇のなかにも救いを見出したアッシュの結末と重なり、やっぱり涙を誘うのだ。