■アナーキーと「もうすでに出会っていた」
アフレコ現場では、共演者たちとオタク談義に花を咲かせることも多い。オタクヒーローを演じる古川慎の印象をこう語る。
「古川さんは、マイクの前に立ってない時は緊張を見せないというか、飄々としているように見えるんです。でもマイクの前に立つと、テストであろうが本番であろうが関係なく全力で、一切妥協をしない。その中で、監督やスタッフとディスカッションを重ねていくところが、キャラクターをすごく深く理解して大切にされているんだなと感じて、素晴らしいなと思いました」
古川の姿勢に感銘を受けたというファイルーズ。彼に受けた影響を聞くと、「どうだろう。私を作ってるのは私なので、あんまり他人に左右されることはないかもしれません」と笑った。
そんな揺るがない信念があるからだろうか。ファイルーズは、運命さえも引き寄せる不思議な力を持っているように感じる。
「つい最近、自分でもびっくりしたことがあったんです。2年くらい前かな。原宿ラフォーレの向かいの建物に、赤髪ツインテールの女の子の、大きいイラストがドーンと貼られていたことがあったんです。
信号待ちしてる時にそれが偶然目に止まって、凄まじい魅力のある絵だなって目が離せなくなって、それがずっと記憶の中にありまして。
本作の2話目を収録した頃に知ったのですが、それ、JUN先生の個展会場だったんです。私が可愛いな、と思って見ていたのが、まさにアナーキーだったと。そのときは先生のことを存じ上げていなかったのですが、もうすでに出会っていたんですよね。すごく驚きましたし、運命的なものを感じました」
アニメ化を前に、すでに劇的な出会いを果たしていたアナーキーとファイルーズ。彼女には、運命を感じさせるエピソードが多い。過去にも、自身が声優を目指すきっかけであり、目標であったキャラクター『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』の空条徐倫役を掴み取っている。
「私自身、ビッグパーソナリティーというか、自分の個性をたくさん持ってる人間だと思っているんです。でも、個性が強いぶん、何かのキャラクターを演じる時に余計なフィルターを感じさせる可能性もあって。作品を見ている人に、悪い意味で私の顔が浮かんじゃったら嫌だなと思っていたんです。
それをカバーするためには、確実な演技力が必要だなと思って、一生懸命に磨いて。今まで私が出会ってきたキャラクターって、私がすっと理解できる部分もあれば、その子独特の個性もあって。
そこがうまいことハマった時に、私はキャラの代弁者として、その世界に存在できてるんだって実感できるんです。自分の個性を失わなかったからこそ、出会えた子たちだと思うので。引き寄せるっていうよりかは、自分を疑わずに見失わなかったからこそ、出会えた奇跡だと思っています」
自分の個性を活かしながら、演じる役のパーソナリティにも真摯に向き合う。「仕事をしているときがいちばん楽しい」と語るファイルーズだが、辛いことはないのだろうか。
「この作品では、喉がめちゃくちゃ疲れますね(笑)。『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』をやっていたときに、だいぶ喉は鍛えられたつもりだったんですけど。
アナーキーは使う音域が高くて、 汚い声もたくさん出すんです。『マジデス』のオーディション概要を読んだ時から、アナーキーは高い声でがなって、汚く泣いたりしてるような印象を受けたんです。だから、恥ずかしがったり、心の中でブレーキをかけたら、絶対にこの役はもらえないと直感しました。それが狙い通りにハマってくれてよかったです。
がなりながら喋って、後のために可愛い声をとっておくという調整は少し難しかったんですが、この作品を通して、喉のコントロール方法みたいなものを身につけられたと思います。
空条徐倫もアナーキーも、作中で成長していくキャラクターたちなので、どの作品でも、キャラクターと一緒に成長できてるのを感じるんです。でも、全く同じ個性のキャラはいないし、使う声帯も喋り方も違うので、自分の引き出しがどんどん増えていってる気がしますね」
《プロフィール》
ファイルーズあい
7月6日生まれ。2019年、『ダンベル何キロ持てる?』の紗倉ひびき役で初主演を務める。その他、『推しが武道館いってくれたら死ぬ』えりぴよ役、『プリキュア』シリーズの夏海まなつ/キュアサマー役、『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』空条徐倫役、『チェンソーマン』パワー役など数々の話題作に出演。2020年には第14回声優アワードにて新人女優賞を受賞するなど高い評価を得ている。
《作品詳細》
『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』
MBS・TBS・BS-TBS“アニメイズム”枠にて、4月より放送
【Cast】
オタクヒーロー:古川 慎
アナーキー:ファイルーズあい
ブルー:愛美
ピンク:黒沢ともよ
【Staff】
原作:MAD ミルクポット markets
原案:JUN INAGAWA
監督:博史池畠
副監督:川瀬まさお
脚本・シリーズ構成:谷村大四郎
アニメーション制作:バイブリーアニメーションスタジオ
公式ホームページ:https://magical-mad.com
公式Twitter:@magical_mad
©Magical Destroyers Committee