1980年代は、世の中が空前のファミコンブームとなっていたものだ。なかでも本家の任天堂に負けずと劣らないヒットメーカーだったのが、ナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)だろう。
ナムコは『パックマン』や『ゼビウス』、そして『ファミスタ』などのファミリーシリーズなどの名作を次々にファミコンに送り込み、小学生だった筆者も本当に楽しませてもらったな。そんなナムコは実はシミュレーションゲームも面白い。そこで筆者が大好きだったナムコのシミュレーションゲームを紹介していこう。
■実はファミコンだと光栄よりも早く発売されていた『三国志 中原の覇者』
三国志をテーマにしたゲームといえば、やはり光栄がパソコン用として1985年に発売した『三國志』シリーズだといえるだろう。だが、ファミコン版ではナムコの『三国志 中原の覇者』が1988年7月に発売されており、光栄の移植版より3カ月も早かった。
さて、そんなナムコの三国志だが、とてもシンプルで入りやすく、戦闘では当時から斬新だった武将同士の一騎打ちがあるのが面白かった。選べる君主は6人と少なく、年代も西暦200年から。官渡の戦い直前で呂布や董卓もいないのだが、当時としては画期的な武将の育成などがあるのでやり込み要素があったな。カタカナで表記されるので、ちょっと読みづらかったが……。
また、演出でアニメーションがあるのも光栄にはない要素でユニークだった。筆者は光栄のパソコン版をすでにプレイしていたが、おもちゃ屋でこの画面を見た時に「欲しい!」と思ったことを覚えている。
ちなみにこのゲームは、君主が万が一にも死亡するとゲームオーバーになってしまう。後継者という設定がないのだ。逆にいえば、敵君主を倒すと領地を丸ごと手に入れることが可能となる。どれだけ領土が豊富な曹操や孫権だって、プレーヤーの劉備に倒されると夏侯惇や司馬懿、陸遜といった三国志の正史や演義(小説)において劉備を苦しめた人物たちが簡単に手に入るのだ。
うん? 待てよ……そういえば、曹操や孫権で劉備を倒した場合、関羽や張飛も自動的に配下になったような……。正史や演義では絶対にあり得ないのだが、それを可能にしたのがナムコ版の良さともいえるだろうな。
■初心者も入りやすい戦国シミュレーションゲーム『独眼竜政宗』
1988年4月に発売されたのが戦国シミュレーションゲームの『独眼竜政宗』だ。操作する主人公は言わずと知れた伊達政宗であり、奥州を制覇するのがゲームの目的となる。実は前年の大河ドラマがまさに『独眼竜政宗』であり、まったくの同タイトルだった今となっては驚いてしまう。大河は、主演の渡辺謙がすごくカッコよかったな……。
さて、このゲームはなんといっても政宗がコミカルであり、配下でゲームの進行役でもある小十郎との兼ね合いが面白い。伊達陣営には小十郎以外にも優秀な家臣がいるのだが、このゲームには武将がいっさいおらず、基本、登場するのは大名のみだった。
領地を開発して石高を上げていき、鉄砲や騎馬を揃えて他国を侵略する。これは同年3月にファミコンに移植された『信長の野望 全国版』(光栄)にも同じことがいえるのだが、こちらは年齢層の高めなパソコンゲームを主軸としているだけに玄人好みだったような気がする。
小学生などの低年齢層には、チュートリアルのように説明してくれる小十郎の存在は大きいといえたな。そういえば、ゲームオーバーしたり、奥州統一を果たしたときには、ナムコット新聞の取材を受けていた……。とってもコミカルで、このゲームから歴史ゲームを始めたチビッ子たちも多かったのではないだろうか。