■『トムとジェリー』が好きなんです

 しかし、その物語を考えたのは他ならぬ伊藤氏自身。実際に執筆した頃のことを、アニメを観て思い出したこともあった様子。

「やっぱり若かった頃の思い出とか、青臭いセリフを書いてたな、なんてちょっと気恥ずかしくなった部分はありました」

 実際に視聴者の我々もそれぞれの作品に漫画として初めて触れた頃を思い出してしまうのだから、伊藤潤二作品の力たるや。そもそも伊藤氏の漫画自体に、映像的なエッセンスがふんだんに用いられている作品が多い。

「自分でもやっぱり、子どもの頃、パラパラ漫画を書いて、アニメーション的な遊びもやっていたんです。なので、映像的な動きは意識して書いています。実際、アニメーションが好きだったんですよね。たとえば、子どもの頃から好きだったのは『ゲゲゲの鬼太郎』、『妖怪人間ベム』。あとは『トムとジェリー』なんかのコメディも面白くて。双一シリーズなんかで、双一が悪だくみをして、最後は失敗してしっぺ返しを食らうのは、やっぱり『トムとジェリー』から来ているかもしれません」

 意外な作品が伊藤氏の口から漏れたところで、その幼少期からの創作の源泉も伺いたくなった。次回は、伊藤氏自身の漫画を描く喜びと、その知られざる日常にも迫る――。

 

《プロフィール》

伊藤潤二
いとう・じゅんじ
1963年生まれ、岐阜県出身。89年に第1回楳図賞で入選し、投稿作『富江』で漫画家デビューを果たす。以降、『道のない街』『首吊り気球』『双一』シリーズ、『死びとの恋わずらい』などの名作を生み出し、映像化作品も多数。19年には、世界で最も権威のある漫画賞の一つ、米国アイズナー賞にて『伊藤潤二傑作集10巻 フランケンシュタイン』(英語版)が「最優秀コミカライズ作品賞」を受賞。22年には最優秀アジア作品賞を受賞し、通算4度目の受賞という快挙を達成。 その作品は海外でも高い評価を得ている。

Netflixシリーズ「伊藤潤二『マニアック』」
1月19日より独占配信中
原作:伊藤潤二「伊藤潤二傑作集」「魔の断片」「伊藤潤二研究ホラーの深淵から」(朝日新聞出版刊)
監督・キャラクターデザイン:田頭しのぶ
脚本:澤田薫
制作スタジオ:スタジオディーン
音響監督:郷田ほづみ
音楽:林ゆうき
【Netflix作品ページ】
https://www.netflix.com/title/81295011

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© ジェイアイ/朝日新聞出版・伊藤潤二『マニアック』製作委員会

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