1月からNetflixで独占配信中の「伊藤潤二『マニアック』」。ホラー漫画の鬼才・伊藤潤二氏の原作をもとに、全12話で贈る珠玉のエピソードの数々。今回は配信を記念して、伊藤氏にインタビューを敢行。本作への想いの丈を聞く。
■ついに『首吊り気球』がアニメ化!
18年に「伊藤潤二『コレクション』」が放送。そして現在、同じ監督、制作チームによる「伊藤潤二『マニアック』」がNetflix独占で好評配信中。まず本作の制作の話が始まったときの印象をお聞きした。
「田頭しのぶ監督とスタジオディーンさんという 『コレクション』と同じチームで作っていただけるということで、安心してお任せしました。ただ、『コレクション』のときに良い作品を使い果たしてしまったんじゃ…と思ってまして(笑)。でも、田頭監督がまだまだありますよ、とおしゃって新たにチョイスしてくれました。その中で、『首吊り気球』や『墓標の町』『トンネル奇譚』は自分でも気に入っている作品でしたので、今回のアニメ化は非常に期待していました。実際の完成作では『首吊り気球』では浮き輪が擦れるような気球の音にすごく説得力を感じましたし、第1話『怪奇ひきずり兄弟 降霊会』は、原作のキャラクターを的確に捉えていただき、ギャグの部分も笑いながら観てました」
■末柄里恵、中川翔子ら声優陣の怪演
もちろん、ほかのタイトルもクオリティは折り紙付き。そこにはアニメスタッフ陣の「伊藤潤二作品愛」が溢れている。なかでも特筆すべきは声優の芝居力の高さ。
「声優陣もベテランの方からキャリアが浅い方も含めて、素晴らしい芝居をされていますよね。 とくに末柄里恵さんは第9話『富江・写真』で、『コレクション』に続き、富江を演じてくださってます。あらためて、声優さんは、本当にすごいスキルを持った方ばかりだなと驚きましたね。『四重壁の部屋』で双一役を演じてくださった三ツ矢雄二さんも『コレクション』に続き、個性的な演技をしていただいてますし、皆さんに彩りを添えていただいたと感謝しています」
富江や双一は、伊藤氏が生みだした悪魔的キャラクターたち。もちろん、それ以外のエピソードで演じた声優も伊藤氏は大絶賛だった。ご覧になれば分かるが、全てのキャストが役とこの世界観を楽しんで演じていることが十二分に伝わってくる本作。筆頭は第12話の『耳擦りする女』でまゆみ役を演じた中川翔子だろう。大の伊藤潤二作品ファンで知られる中川の声優としての演技について、伊藤氏はこう語る。
「こちらがしょこたんのファンなので、出演いただいたのは本当に恐れ多いんです…。最近も、私の『よん&むー』(漫画『伊藤潤二の猫日記 よん&むー』)をテレビで紹介していただいて…。すごく反響があったらしく、感謝の気持ちでいっぱいです。今回、しょこたんがまゆみ役で素晴らしい演技をしてくださいました。アフレコをリモートで拝見したのですが、マイクワークも見事ですし、本当にお芝居の面でも一流だなと。まゆみというキャラクターの不安定な内面や心のゆらぎを見事に演じていただきましたし、その出来上がった作品にも、ただ圧倒されました」