■長らく封印された主演作『ルパン三世・風魔一族の陰謀』

 半世紀にもおよぶ活動の中で、一時期封印されていた古川登志夫のキャラがある。

 モンキー・パンチさんによる漫画『ルパン三世』は、1971年に旧作テレビアニメからシリーズを重ね、2022年には「PART6」が制作。「PART3」のいわゆる「ピンクのジャケット(ルパン)」までを山田康雄さんが担当し、1995年に亡くなられた後をものまねタレント・栗田貫一が受け継いでいる。

 だが、山田さんが存命だった1987年に公開された劇場版第4作『ルパン三世・風魔一族の陰謀』で、メインキャスト5人の声優陣が刷新され、ルパン三世役を古川登志夫が務めた。アニメの人気キャラを別の声優が引き継ぐということは、現在でも賛否の評価が分かれる要素のひとつ。80年代の作品でもそれは変わらず、映画公開後に一部ファンから否定的な手紙が大量に届いたこともあったという。

 古川は、過去にバラエティ番組などでこの作品について「黒歴史化」していると語っており、2022年のラジオ番組『くにまるジャパン極』(文化放送)で話した内容によると、視聴者から送られてきた大量の「ディスリのお便り」「アンチレター」を読んで足が震えたそうで、長い間自身のキャリアからも消していたことがあったとか。だがそんな心境も変わり、「最近になって1本でもこんな大作やらせていただいたんだから、光栄だなと思ってこっそり戻した」そうで、現在の古川の公式サイトを見ると『風魔一族の陰謀』の名前がしっかり記されている。

 そんな歴史を知るファンにとって、昨年は半天狗役への起用と同じぐらい感動的なニュースがあった。それが2022年12月よりDMMTVで配信された新作スピンアニメ『LUPIN ZERO』で、古川がルパン二世役を務めていることだ。

 一時期は「黒歴史」としてキャリアから消していたルパン。古川は同作のキャスト発表後、自身のツイッターで、「いろ~んな思い出のある作品なだけに、令和の今、また『彼』に関われるとは! 何か積年のわだかまりが自分の中ですっきり解決できたような心地です。まさか『二世』を演じられる日がくるとはっ! 大感謝です」とその思いをファンに伝えていた。

 35年の時を経て同氏が新しいルパンに関わることは、どちらのファンにとっても喜ばしい出来事であるのは間違いない。

 往年のファンでは、アニメ『パタリロ!』の「クックロビン音頭」、ドラマ『意地悪ばあさん』のテーマ曲も務めた、男性声優アイドルのさきがけともいえるユニット「スラップスティック」の印象があるという人もいるはず。また、最近ではアニメ『からくりサーカス』(2018年)で白金やフェイスレスなど1人4役を演じ、最強の敵としてその存在感に慄いた若いファンもいるかもしれない。

 半世紀に渡って第一線で活躍し続ける古川登志夫。これから先もファンを楽しませ続けてほしい。

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