90年代の『りぼん』(集英社)といえば、“黄金時代”と呼ばれるほど名作が多く連載されている時代だった。矢沢あい氏の『天使なんかじゃない』や水沢めぐみ氏の『姫ちゃんのリボン』など、当時の“りぼんっ子”たちはこれらの作品に夢中になっていただろう。
少女漫画雑誌である『りぼん』はやはり恋愛漫画が目立つ傾向にはあるが、実は90年代の本誌はギャグ漫画も名作揃いだった。今回はそんな90年代の『りぼん』で連載されていたギャグ漫画の名作たちをご紹介しよう。
■国民的アニメの原作『ちびまる子ちゃん』さくらももこ
さくらももこさんによる『ちびまる子ちゃん』は、1986年から1996年にかけて『りぼん』でレギュラー連載をしていた作品だ。
2002年1月号から2016年1月号にかけては不定期連載としてたびたび誌面に掲載された本作だが、2018年に作者のさくらさんがご逝去され、2019年からは「さくらプロダクション(小萩ぼたん)」の作画で、さくらさんが生前に残していたテレビアニメ用の脚本をもとに不定期連載を開始している。
さくらさんの投影キャラクター“ちびまる子ちゃん”を主人公に、友人や家族とのエピソードを面白おかしく描いている本作。“エッセイ漫画”としての側面が大きいものの、作中で描かれるまる子や祖父の友蔵、愉快なクラスメイトたちが繰り広げる“ギャグ”のような日常と、作者自身がツッコミを入れる、いわゆる「天の声」の掛け合いが面白い作品になっている。
また、1990年にテレビアニメ化した本作は、令和の現在でも放送が継続される長寿番組になり、親子何世代にもわたって親しまれている。さくらさんの秀逸なギャグセンスが光る珠玉の名作、『ちびまる子ちゃん』。これからも多くのファンを笑いの渦に巻き込んでいくことだろう。
■ギャグの名作が勢揃い!『こいつら100%伝説』『ルナティック雑技団』岡田あーみん
『お父さんは心配症』で有名な岡田あーみん氏の、『こいつら100%伝説』や『ルナティック雑技団』も90年代に『りぼん』で連載された作品だ。
戦国時代を舞台にしたドタバタギャグコメディで、当初は学園漫画として構想されていたが、“忍者”を主軸にしたことからこのような設定になったそうだ。コミックス最終巻である3巻で、本作について岡田氏は「難産だっただけに愛おしい作品」とコメントしており、思い入れのある作品であることがわかる。
また、『こいつら100%伝説』の連載終了の翌年、1993年からは『ルナティック雑技団』が2年にわたって連載されていた。
学園の人気者で強烈なカリスマ性をもつ天湖森夜と、彼を溺愛する母・ゆり子、そして彼らに振り回される星野夢実の日常が描かれたストーリー。岡田氏によると本作は“ラブコメディ”だそうで、恋愛要素も取り入れた勢いのあるギャグ漫画だ。
高校在学中にデビューしてから、怒涛の勢いでヒットを連発した岡田氏。残念ながら、『ルナティック雑技団』の連載終了から新作の発表はされていないようだが、独特なタッチで描かれる彼女の作品に感銘を受けたファンは多く、今後も“りぼんっ子”たちの間で語り継がれる名漫画家であることは間違いないと思う。
■当時15歳だった…!『へそで茶をわかす』茶畑るり
『へそで茶をわかす』は、1991年にわずか14歳で「第270回りぼん新人漫画賞」を受賞した茶畑るり氏のデビュー作。当時、中学生で漫画家となった彼女は、1992年から8年間にわたって本作を連載している。
類まれなるユーモアセンスの持ち主・江崎ぐりこを中心としたシュールなギャグが光っており、女子高生の彼女たちの生活が主軸に描かれたテンポ良く読める4コマ漫画として、長きにわたって『りぼん』で愛されるギャグ漫画となっていた。
余談ではあるが、作者の茶畑氏は2022年に『茶畑マスク』という自身の初写真集を発売。彼女のネットショップで購入できるというこの写真集は、プロレスマスクを装着した茶畑氏が街中などさまざまな場面でポージングを決める様子がおさめられ、彼女らしいシュールな作品になっているようだ。