『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』 Blu-rayメモリアルボックス(C)創通・サンライズ
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 79年〜80年に放送された『機動戦士ガンダム』。その流れを組む、OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(『ポケ戦』)、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(『0083』)、『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』、(『08小隊』)。いずれも叙情性溢れる物語で人気を誇る作品だが、今回はその秀逸なるサブタイトルを考察してみよう。

■『戦場までは何マイル?』という至高のサブタイトル

 1989年にOVAが発売された『ポケ戦』は、サイド6の少年・アルと、幼馴染みで隣人の地球連邦軍のテストパイロット・クリス、そしてジオン兵のバーニィが出会い、戦争の残酷さを描く全6話だ。注目は、少年時代の浪川大輔演じるアル、林原めぐみが演じる美しきお姉さんのクリス、『機動戦士ガンダムF91』で主人公のシーブック・アノーを演じることになるバーニィ役の辻谷耕史の競演。本作ならではの声優陣の魅力をぜひ体験してほしいところだが、それだけでなくサブタイトルも切れ味鋭いものばかり。

 とくに第1話のサブタイ「戦場までは何マイル?」がシビれる。各ガンダムシリーズ第1話のサブタイには、『ファースト』の「ガンダム大地に立つ!!」や、『Z』 の「黒いガンダム」、厳密には第1話ではないが、『ZZ』 の「シャングリラの少年」など象徴的なタイトルが多い。

「戦場までは何マイル?」もそれらと同様に、本作の核を言い表しており、日常と非日常(戦場)が地続きであることを示していてグッとくる 。MS・ケンプファーの活躍する第3話「河を渡って木立を抜けて」は、アーネスト・ヘミングウェイの小説「河を渡って木立の中へ」を想起させ、この「抜けて」の部分がまた切ない。ちなみにアニメ『BANANA FISH』の第3話は「河を渡って木立の中へ」というヘミングウェイそのままなサブタイトルを使用しており、見比べてみるのも一興だろう。

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