「アニメ制作会社といえば?」と質問されたら、どこを思い浮かべるだろうか。言わずと知れた『スタジオジブリ』か、美しく繊細な作画に定評のある『京都アニメーション』か、それとも『虫プロダクション(現・手塚プロダクション)』の系譜を引く『マッドハウス』か……。
アニメ大国である日本には数多くのアニメ制作会社やスタジオが存在し、それぞれの理念を掲げて制作に打ち込んでいる。今回はそれらのなかから、近年大ヒットが続いている『MAPPA』に注目したい。
■はじまりは『この世界の片隅に』
MAPPAの設立は2011年。マッドハウス設立者の一人であり『YAWARA!』『DEATH NOTE』など数々の名作を手がけた丸山正雄プロデューサーが、片渕須直監督の映画『この世界の片隅に』を世に送り出すために立ち上げたものだった。
戦時下に広島から呉(広島県内にある軍港町)に嫁いだ18歳の主人公が、当時の貧しい日本で強く生きていく姿を描いた本作。資金繰りに苦戦しながらも、2016年の公開後は60以上の国と地域で上映、日本では最長となる1133日連続ロングラン記録を打ち立て、数々の賞を受賞している。
現在、丸山氏は経営から退いているが、「面倒くさいことを言う人の、面倒くさい希望をあえて叶える」という設立当初の精神は引き継がれているという(「アニメ!アニメ!」インタビューより)。良質な作品を絶えず生み出し続ける秘訣は、そこにあるのだろう。
■大ヒット作品が名を連ねる近年の代表作
MAPPAの近年の代表作といえば、まず、2020年10月放送の『呪術廻戦』が思い浮かぶ。人間の負の感情が生み出す“呪霊”と呪術師たちの戦いを描いた本作は、躍動感あふれるカメラワークが特徴的だ。さらに2021年12月公開の『劇場版 呪術廻戦0』は、国内137億円、世界230億円以上の興行収入を記録する大ヒット作となった。
続く2022年10月には、”チェンソーの悪魔”になった少年がデビルハンターとして戦う姿を描いた『チェンソーマン』が放送された。毎週エンディングで違う曲と映像を使うなど、制作にかんする強いこだわりを実現させた作品だ。原作と異なる世界観に対して原作ファンからの批判の声もあったようだが、それも含めて大きな話題をさらった。
また今年3月からThe Final Season完結編(前編)がスタートした『進撃の巨人』も、2020年12月から始まったファイナルシーズン以降、MAPPAが制作を引き継いでいる。巨人と戦う際の“立体起動装置”を用いた縦横無尽なアクションはもちろんのこと、街並みのリアルさや目の覚めるような青空など、背景の美しさにも目を奪われる。