今思うと、当時のアスキーから発売されたファミコンソフトは“ちょっと視点が違った”ゲームが多かった。これは、スーパーファミコンソフトでも同じことがいえたと思う。スーファミでのアスキーといえば、やはりスーパーヒットとなった『ダービースタリオン3』が思い出されるが、ちょっと視点が違って良い風に“尖っている”ソフトが多かったような気がする。そこで、名作ソフト揃いのアスキーから発売されたスーパーファミコンソフトを紹介していこう。
■今なら発売禁止か!? テレビ番組で公開殺人ゲームを行う『スマッシュT.V.』
まずは、一攫千金を夢見る者が集まる『スマッシュT.V.』だ。1990年、アメリカのウィリアムスがアーケードゲームとして制作し、日本では1992年にアスキーが発売している。
これは、未来の大ヒットテレビ番組が行う公開殺人ゲームだ。クリアするとビッグな商品と高額の賞金を手にできるので、参加者たちは己の命をかけてバトルゲームに参加する。いや、そんなテレビ番組ってダメでしょ……と言いたいところだが、まあゲームなのでアリとしておこう。
ゲーム内では大多数の敵キャラに襲われるのだが、武器を駆使してこれらを撃退していく。ロボットなどが相手だったから、対人でないだけまだマシかもしれない。しかし、これが面白いからハマってしまうのだ。
設定は言ってみれば“リアル脱出ゲーム”みたいなものなのだが、参加者が命懸けなのがちょっと違うところ。しかもリアルタイムで放映し、番組MCもDJのように盛り上げてくれる。金髪美女を両脇に抱えて煽り続けるさまは、まさに“アメリカンドリーム”が待っているかのよう!
『カイジ』か『イカゲーム』っぽい感じだが、当時としては斬新なゲームだといえるだろう。今なら発売禁止になるかもしれないが……。このようなゲームを日本で発売してくれるアスキーって、やっぱりちょっと尖っていると思う。
■コンテストに応募するまでは仕上がらないが一人でも楽しめる『ツクールシリーズ』
次は、オリジナルのRPGが自分で作れるという『RPGツクール SUPER DANTE』だ。もともとパソコン版でリリースされており、スーパーファミコンで発売されたのが1995年で、のちにゲームボーイアドバンスやプレステでもシリーズが発売されていくこととなる。
また、RPG以外にもサウンドノベルや音楽ソフトなど、『アスキーツクールシリーズ』としても定着しており、一時期、ゲームクリエイターに憧れていた筆者のような若者たちの心に火を点けていった。
筆者もスーファミの『RPGツクール』でオリジナル作成に励んでいた。確か当時のコンテストではVHSのビデオテープに録画したものを送るのが一次審査だったような気がする。もちろん、そこまで行くまでに力尽きてしまうのだが……。
それにしても面白かった。当時、すでに仕事に就いていた時期だったこともあり、途中で諦めてしまったものの、時間を忘れてゲームを作成したものだ。ここまで一人で夢中になって制作をしたのは、タミヤのプラモデル以来だった気がする。とはいえ、スーファミはキーボードではないので、会話などを入れるときに文字を選択しなければならないのが面倒だったな。
ちなみに、筆者はその後ゲームプログラミングの学校に仕事で赴いたが、『RPGツクール』の話になったとき、講師の方から“ファミコン創世記の人たちはほとんどプログラムを一人で組んでいた”と聞いたことがある。『RPGツクール』で根を上げているようではクリエイターにはなれないのだろうと痛感したものだ。
それにしてもこんなゲームを開発できるなんて……いや、やはり視点がちょっと違うな。アスキーは……。