■漢気という言葉が似合いすぎるジャンク屋「ケリィ」

 最後に紹介するのは、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』より、ケリィ・レズナーだ。

 第6話「フォン・ブラウンの戦士」に登場するケリィは、主人公コウ・ウラキが暴漢にボコボコにされているところを偶然助ける。最初はコウに対し「軍人なら『僕』なんて言うな」と、ぶっきら棒な態度をとっていた。ケリィは、ジオン軍の元パイロットであり、一年戦争時に左腕を失ったことで、パイロットを降ろされた過去を持っていたのだ。

 パイロットを降ろされたケリィと、ガンダム試作1号機を壊したことに悩むコウは、互いに敵同士であることを理解しながら、ケリィの営むジャンク屋でモビルアーマー、ヴァル・ヴァロの修理を通じて次第に打ち解けていく。

 第7話「蒼く輝く炎で」でケリィは、コウの搭乗するガンダム試作1号機・フルバーニアンとヴァル・ヴァロで対峙した。戦闘時に口にした「ヴァル・ヴァロだぞー!」というセリフは、実にガンダム作品らしい言い回しだ。

 コウはギリギリのところでビーム・サーベルをヴァル・ヴァロに突き刺し、なんとか勝利する。旧型のモビルアーマーで善戦したパイロットとしての腕前や脱出装置を積み込んでいない漢気など、彼もまた、まだまだ生きていて欲しかった、死が惜しまれるキャラクターと言える。

 余談ではあるが、『機動戦士ガンダム0083 REBELLION』(漫画:夏元雅人氏、原作:矢立肇氏・富野由悠季氏)では、コウとの戦闘で戦死せず、その後に活躍する姿がみられる。

 

 ガンダム作品はいずれも「戦争」をテーマにしていることから、キャラクターの死は免れない。今回はジオン兵に絞った選出だが、シリーズでは主人公さえ戦死することがある。キャラクターが死と隣り合わせにいることで、一層その魅力が引き出され、ガンダム作品の深い人間模様に繋がっているのだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4