漫画もアニメも、第1話で与える印象は大切だ。今後も視聴を続けるかという判断基準になるため、いかに読者・視聴者の気を引くインパクトのある展開を持ってくるかが重要となる。
しかし1話を見たものの、続く2話からはなぜか主人公が変わって驚かされるという作品に出会ったことはないだろうか。今回は「さっきまで見ていたのは別作品?」「あれ? 主人公じゃなかったの?」と思わずファンがツッコんでしまうような、主人公交代作品を振り返りたい。
まずは、2007年にアニメ化もされ人気を博した鬼頭莫宏氏による漫画『ぼくらの』。これは自然学校に参加した少年少女15人が巨大ロボット「ジアース」を操縦し、巨大な敵を倒して地球を守ろうと奮闘するストーリーだ。
ロボット搭乗の契約時、少年たちはこれはゲームだと説明されるが、そのロボットに乗ることにはあまりにも大きい代償が伴うことが後々明らかになっていく。
第1話で1人目のパイロットとして「ジアース」に乗って戦闘をしたのは、いかにも主人公然としたリーダータイプのワクこと和久隆。コミックス1巻でも一番デカデカと描かれている彼は、なんとか敵を倒すが戦闘後に死亡する。このときはまだ誰も気づいていないが、「ジアース」に乗って戦闘するとパイロットは必ず死亡してしまうのだ。
1話前半ではワクを主軸にした王道のロボットアニメが繰り広げられる雰囲気が漂っていたが、結局彼の登場はたった1話のみとなってしまった。以降も少年少女たちはパイロットに選ばれた順に「ジアース」で戦闘し、1人ずつ命を落としていく。あまりにも衝撃的な物語の幕開けに驚いた視聴者は多かったことだろう。
続いては、『週刊少年ジャンプ』に連載されていた原作・稲垣理一郎氏、作画・Boichi氏による『Dr.STONE』。人類全員が謎の石化をした3700年後の世界で文明を再建していく物語だ。
物語の第1話は、高校生の大木大樹が思い人である小川杠に告白しようと彼女を学校のクスノキの木の前に呼び出すところから始まる。そして人類の謎の石化後も大樹の視点で進んでいき、1話の最後では石化から目覚めた大樹が、半年前にすでに目覚めていた石神千空と再会するところで終わる。
大樹は、黒髪を逆立てた、眉毛の太い少年漫画の主人公的な見た目をしたキャラ。ページの登場数も大樹のほうが多く、千空は大樹にちょっかいをかけるちょっとニヒルなサポートキャラのように見えた。こういった展開から、1話時点では大木大樹が主人公の漫画だと思った人は多いだろう。
だが『Dr.STONE』の主人公は千空であり、この後の展開により大樹はしばらく出てこなくなってしまう。ちょっと意外なかたちの主人公交代だった。