■中二的カッコよさ「大西洋、血に染めて」「時間よ、とまれ」

『ファースト』の中でも最近映画化された第15話「ククルス・ドアンの島」も秀逸なサブタイだが、その1話前の第14話「時間よ、とまれ」もカッコよさでは負けてはいない。ドイツの詩人・ゲーテの詩劇『ファウスト』の一節「時よ止まれ」を彷彿とさせるこの回。

 アムロが戦うのはモビルスーツではなく、ガンダムに時限爆弾を仕掛けるジオン兵たちだ。富野由悠季(当時:富野喜幸)総監督が『ファースト』で脚本、絵コンテ(斧谷稔名義)までを手掛けた唯一の回で、ジオン兵のモラトリアム感も楽しい。

 また第28話「大西洋、血に染めて」は、そのサブタイのカッコよさと儚いストーリーで有名だ。連邦軍の人気キャラ、カイ・シデンの悲恋を描くこの回は、“助詞を入れない系サブタイ”(「ガルマ 散る」など多数)の代表格として推したい一つである。

 ところで、似ているタイトルの映画に1961年の和田浩治主演の日活映画『海峡血に染めて』(鈴木清順監督)がある。これも海峡を舞台にして、海上保安大の学生である主人公が密輸から海を守る中、内通者が登場したりという一作だが、ひょっとしたら元ネタなのだろうか……?

■「彗星はもっと、バァーッて動くもんな!」に至るサブタイトル

「宇宙」=「そら」の読み方は『ガンダム』シリーズの中ではよくあること。それゆえ、劇中のセリフの中でも「宇宙」は「そら」と語られることが多い。しかし、『ファースト』の第41話「光る宇宙』は「うちゅう」と読む。

『機動戦士Zガンダム』(以下、『Z』)では、第34話の「宇宙が呼ぶ声」、第47話の「宇宙の渦」、最終話の「宇宙を駆ける」はすべて「そら」だ。

 で、どちらが正しいのかという問題なのだが、これはエピソード別に使いわけている様子。とくに『Z』のほうは、主人公・カミーユたちの視点で「宇宙(そら)」を認識しているように思える。とりわけ、前述の「宇宙(そら)」の付いた3タイトルが『Z』の中でも屈指のエモさであることは間違いないだろう。

 テレビ版のあまりに有名なラスト「彗星かな、違う…違うな。彗星はもっと、バァーッて動くもんな!」。あの正気を失ったカミーユは、やはり「呼ぶ声」に誘われ、「渦」に呑まれて、「宇宙を駆けた」結果、宿敵シロッコのプレッシャーに巻き込まれたようにしか思えないからだ。

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