■命がけの愛を歌う『ベルサイユのばら』の「愛の光と影」

 1979年(昭和54年)から放送された『ベルサイユのばら』は、フランス革命前後のベルサイユを舞台に、その時代を生きる人々の愛と人生を描いた作品だ。1974年の宝塚歌劇団による舞台公演が追い風となり、爆発的大ヒットを記録した。

 本作を見たことがなくても、薔薇をテーマにしたオープニング曲「薔薇は美しく散る」の一節を知っている人は多いだろう。まさに歌劇風の、華々しいストリングスが印象的な曲だ。

 一方でエンディング曲では、淡々と流れるアルペジオと徐々に盛り上がりを見せるストリングス、オープニングでも歌を担当した鈴木宏子の透明な声が哀愁を誘う。

 そして、なんといっても最後の「オスカァァァァルッ!」という身を切るような叫び。それもそのはず、これは愛から得られる歓びだけではなく、愛がもたらす苦しみや哀しみの側面を歌った曲だ。それによってさらに深まる、命をかけた愛……重い。これぞ昭和の歌謡曲だ。

 

 以上に紹介した曲はほんの一端で、昭和の時代、ほかにも多くの名作とともに名曲バラードが誕生している。

 全体的に、オープニング曲では「さぁ始まるよ!」というワクワク感とともに、キャラクターのカッコいい部分を見せ、エンディング曲では「また来週ね」と一時のお別れを寂しがり、キャラクターの素の部分を見せているようだ。そう考えると、エンディング曲に感傷的で美しい名曲が集まるのも、うなずける気がする。

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