『天才バカボン』『タイガーマスク』『ベルサイユのばら』も… 昭和アニメあるある“切なすぎるエンディング曲“を振り返るの画像
『タイガーマスク』 DVD‐COLLECTION VOL.1(TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D))

 “昭和レトロ”という言葉とともに、昨今では昭和歌謡が再び注目を集めている。どうやら、あの独特の哀愁が漂う曲調や歌詞が、現代の若者に“エモい”と刺さるらしい。

 当時のアニメのテーマソングにも、エモさは十分に反映されている。とくに、勇ましいオープニング曲に対して、エンディング曲は切ないバラードが多く、今、振り返ってみても名曲揃いだと思う。そこで今回は、昭和アニメのエンディング曲に使われた切ない名曲を紹介していく。

■歌詞が妙に切ない…『元祖天才バカボン』の「元祖天才バカボンの春」

 テレビアニメ『天才バカボン』シリーズの2期にあたる『元祖天才バカボン』。1975年(昭和50年)から放送がスタートし、バカボンとバカボンのパパが繰り広げるナンセンスギャグでお茶の間に笑いを届けた。

「♪これで~いいのだ~」というお馴染みの曲は1期のオープニング曲で、2期のほうは「タリラリランのコニャニャチワ」という、これまた明るく、いかにもナンセンスな曲だ。

 エンディング曲は、原作の赤塚不二夫氏が歌詞を手がけた「元祖天才バカボンの春」(10話以降)。出だしはマイナー調の昭和歌謡なメロディからはじまり、サビでは急に軍歌風の勇ましさを見せる。「こおろぎ' 73」の泣かせるボーカルとともに、終始、歌詞が妙に切ないのが特徴だ。

 ちなみに、歌詞の中に出てくる「41歳」というのはバカボンのパパの年齢だそうだ。人生100年時代と言われる現代とはズレが生じるだろうが、かつて心理学者のC.G.ユングは人間の一生を一日にたとえ、40歳前後を「人生の正午」と定義した。

 41歳はまだまだこれから!と思いつつも、暮れ行く日を前にこれまでの人生をふと振り返る……そんなお父さんたちの背中を思わせる。

■希望を捨てずに明日を見る『タイガーマスク』の「みなし児のバラード」

 1969年(昭和44年)から放送された『タイガーマスク』。孤児院出身の主人公・伊達直人が、全国の孤児のために悪役覆面レスラー“タイガーマスク”として活躍する姿を描いた作品だ。

 激しいプロレスを題材とした作品でありながら、エンディング曲の「みなし児のバラード」は、あまりに暗く悲しい。昭和の子どもたちはこの曲を聞いて、毎週何を思っていたのだろう……。

 とはいえ歌詞を見ると、なるほどと納得する部分も。孤児という出自や生きていく厳しさを憂いながらも、慕ってくれる子どもたちの幸せを祈り、希望を捨てずに戦い続けるという物語の根幹部分を歌っている。

「虎だ! 虎だ! おまえは虎になるのだ!」のセリフから始まるオープニング曲ではタイガーマスクの勇ましさを、エンディング曲では伊達直人の痛みを表しているのだろう。

 ちなみにこの名曲、現在では“みなしご”が差別用語として放送コードに引っかかるため、テレビ放送はできないらしい。時代は変わるものだ……。

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