■プリンセスを“公募”するという意欲作!『田代まさしのプリンセスがいっぱい』

 1989年にハル研究所からMSX2版として発売された『田代まさしのプリンセスがいっぱい』は、そのものずばり、なんと田代まさし自身を主人公キャラクターにしてしまった意欲作である。ファミコン版は同年、EPIC・ソニー(現:ソニー・ミュージックレーベルズ EPIC Records JAPAN)から発売されている。

 本作は主人公・田代まさしを操作し、ヨーヨーを武器としたアクションを繰り広げながら4人のお姫様を救うというもので、内容自体は一般的な“横スクロールアクション”のそれである。

 しかし、本作が話題となったのは、この4人のお姫様の“イメージモデル”となる女の子を“公募”で、オーディションを行い採用したという点。審査には田代まさしだけでなく編集部やソニーの人間も加わり、合格した4人のプリンセスには賞金10万円の贈呈やゲーム内に名前が使用されるなど、さまざまな“特典”が用意されていた。

 なにより、当選を果たした4人は、ゲームパッケージに名前、当時の年齢、顔写真が掲載されるなど、今から考えても実に攻めた内容の一作となっている。

 ある種の“変化球”ともいえる取り組みが見えた本作だが、一方でゲームの内容にはあまりギャグ要素はなく、いたって平坦な横スクロールアクションとなっている。一応、グッドエンド、バッドエンドの概念もあるのだが、ゲームの概要が破天荒なぶん、どうしても内容の物足りなさを感じてしまったプレイヤーも少なくはないようだ。

 その後、田代まさしに関する騒動があった影響もあり、現在ではこの作品を手に入れることが非常に難しく、“幻の作品”となってしまっている。当時の田代氏のあまりにもオリジナルな発想がこれでもかと盛り込まれた、なんともマニアックな一作である。

 

 今となってはゲームに“有名人”が登場することは珍しくはないが、ファミコン時代にも数々の有名人がコラボを果たしていたというのは驚きである。

 有名人の持つノウハウを盛り込んだり、ゲームと現実をコラボさせたりと、それぞれの作品に有名人の個性が表れているのも非常に興味深い点だ。

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