■なぜ連載終了した?『幽☆遊☆白書』や『逃げ恥』も…
続いては、冨樫義博氏の『幽☆遊☆白書』を紹介したい。同作も原作漫画だけでなく、1992年から放送されたアニメが大ヒットしているが、まさに放送中の1994年、人気絶頂のタイミングで最終巻であるコミックス19巻が発売された。
作者の冨樫氏はこの経緯に対して、自身の発行した同人誌で「身体の都合上」「マンガに対する考え方」「仕事以外の欲求」と3つの柱に分けて語り、最後には「わがままでやめました」という言葉で締めていた。出版社に従って描き続けても、ずっと似たようなことを読者が飽きるまで繰り返すだけになると考えていたことがうかがえる。
また、連載終了に対しては「ようやく終了することができたという、開放的な快感が正直言って一番大きい」とも明かしていた。熱狂的なファンが多くいる作品だけに残念な気持ちは正直あるものの、作者は“作品の神様”といっても過言ではない。少年漫画の最前線にいる作家からこのような発言があったこと自体が、非常にまれなケースだったと言えるだろう。
なお、冨樫氏は2022年10月24日発売の『週刊少年ジャンプ』にて、約4年休載していた『HUNTER×HUNTER』の連載を再開している。冨樫氏のこの渾身の一作を引き続き読めることを、一ファンとして楽しみにしたい。
最後は、海野つなみ氏による『逃げるは恥だが役に立つ』。契約結婚をテーマとした“ムズキュン”な内容が人気を博しただけではなく、津崎平匡役を演じた星野源が歌うドラマ主題歌「恋」に合わせてキャストたちが踊る“恋ダンス”が大ヒット。
また、2021年には主演を務めた新垣結衣と星野源が結婚するなど、ドラマ本編以外でも大きな話題を集めたのは記憶に新しい。
同作の原作漫画は『Kiss』(講談社)にて、2012年から2017年2月号まで連載。テレビドラマ化されたのは連載終了直前ともいえる2016年秋クールで、12月20日に最終回を迎えている。この最終回は視聴率20.8%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)とまさに時代を代表する人気ドラマのひとつとなったが、ドラマのヒットをきっかけに、2016年当時は原作の売り上げも累計210万部まで一気に伸びていた(2021年時点では450万部を突破)。
全11巻で幕を閉じた『逃げ恥』だが、嬉しいことに2019年から2020年まで続編が連載されている。これは2021年1月2日に放送されたスペシャルドラマを見据えてのものだったかもしれないが、みくりと平匡のその後の展開が描かれた内容にファンは歓喜した。
原作の最終回を読んでみたが、ドラマよりはどことなく展開が落ち着いており、漫画とドラマにそれぞれ違った良さがあるように感じた。どちらも楽しむことができるのも、『逃げ恥』の良さだろう。ドラマの制作サイドも多様性を実に丁寧に描いており、原作をリスペクトしている様子が感じられた。
人気絶頂の中で終了した作品たちを紹介してきたが、ファンの本心は「もっと読んでいたかった」の一言に尽きるだろう。しかし作品のクオリティを保ったまま、最高に面白い状態で完結するのは、作者にとっても読者にとっても一番いいことなのかもしれない。