ゲームのプログラミングミスや、想定外な事象の組み合わせによって発生してしまう“バグ”。望ましくないものである一方で、あまりにも衝撃的な内容から、プレイヤーたちの間で噂が広がってしまったものまで存在する。
ゲームの世界観までをも破壊しかねない、どこか恐ろしくも驚いてしまうバグの数々について見ていこう。
■あまりにも恐ろしい…『ぼくのなつやすみ』の「8月32日」
2000年にPS用ソフトとして発売された『ぼくのなつやすみ』は、都会から田舎町にやってきた“ぼく”を通して、夏休みを追体験することができるほのぼのとしたテイストのゲームだ。
田舎の人々との交流や、虫取りや魚釣りといった夏休みならではの自由でゆったりとした時間を過ごすことができるのが最大の特徴だが、そんなゲームの雰囲気を一変させる、あまりにも恐ろしいバグが存在する。
夏休みをテーマにしているということで、ゲームは8月31日でエンディングに突入するのだが、あるバグを利用することで“8月32日”以降へと進むことができてしまうのだ。
これだけ聞くとたいしたことがなさそうに思えるが、本来、存在しない日付を過ごしている影響か、ゲーム内のさまざまな箇所に少しずつ影響が表れ始める。
田舎から人の姿がいなくなるなんていうのは序の口。人間の体が崩れて表示される、文字がぐちゃぐちゃになって識別できなくなる、主人公の“ぼく”自体も体が表示されなくなる、絵日記の画像が理解不能な図形になる……など、平和だったはずの田舎町の姿が徐々に崩壊していく姿はあまりにもおぞましく、その衝撃的な内容から「ゲーム史上もっとも怖いバグ」として語り継がれている。
実はこのバグについては、初代『ぼくのなつやすみ』で原作・脚本・監督を務めた綾部和氏が自身のツイッターで、“8月32日なんてデータは用意されていませんから当然むちゃくちゃになりますが、その部分はプログラミングが優秀なので、ドライバーが堅牢で、データが存在しない日時に突入してもボロボロになりながら動いてるんです”と明かしている。
要は、ゲームのプログラミングが逆に“優秀すぎた”ために生み出されてしまったバグということだ。
それにしても、終始ほのぼのした雰囲気で展開されるゲームだけに、あまりにも強烈なギャップから有名となってしまったバグであることは間違いない。
■レアリティはある意味ミュウ以上!?『ポケットモンスター』の「けつばん」
1996年にゲームボーイ版ソフトとして発売された『ポケットモンスター赤・緑』は、今や世界中を巻き込む超人気作となった『ポケモン』シリーズの記念すべき初代作品である。
本作では“幻のポケモン”と言われるミュウを含め、151匹のポケモンが登場するのだが、当時「152匹目のポケモンが存在するのでは」という、奇妙な噂が広まった。この噂の原因となったのが、バグによって生まれた「けつばん」と呼ばれる存在である。
そもそも“けつばん”とはデータ領域の空き番号……すなわち「欠番」を指し示す言葉だったのだが、どういうわけかこの名前を持つポケモンが誕生し、それをゲットしてしまうプレイヤーがちらほらと現れてしまった。
当然、正式なポケモンではないためグラフィックも崩れてしまっているのだが、なぜかポケモン図鑑の152匹目に登録されていることから「幻の隠しポケモンなのでは?」と噂されるようになったのである。
全能力がカンストしているというとんでもないポケモンなのだが、バグ上の存在であるため、無理矢理に使い続けるとデータが消えるといった致命的なバグを誘発しかねない。
その後の作品でも、たびたびこの「けつばん」を連想させるポケモンが登場したりと、プレイヤーだけでなく開発者にとってもどこか馴染みの深い存在として愛されているバグの一つだ。