■「こんなもんでよけりゃ毎日作ってやるぜ」

 冨樫義博氏による『幽☆遊☆白書』(集英社)でもまた、主人公・浦飯幽助が幼なじみの雪村螢子を相手に正面切ったプロポーズをしている。

 螢子は不良になって恐れられている幽助と変わらず接し、誰よりも彼の身を心配している健気なキャラ。幽助もそんな螢子に対して、守るべき人という気持ちが強い。

 そんな友だち以上恋人未満といった関係の二人だったが、仙水との戦いを終えた幽助は自分のルーツを探るために魔界へ渡る決心をする。そして螢子の実家の食堂を訪れ、定食を食べながら3年したら戻ってくると約束すると、「結婚しよう」と口にした。激しいバトルシーンから一変して、何気ない静かな日常を描いたエピソードだが、この空気感もまた冨樫作品の魅力だろう。

 二人のエピソードは最終盤にも設けられており、3年後に無事人間界に戻った幽助は屋台ラーメンの店主になっていた。そこで螢子が屋台を訪れて、初めての幽助の手料理に驚くと、幽助は「こんなもんでよけりゃ毎日作ってやるぜ」と何気なく返す。これには螢子も顔が赤くなってしまったが、ここもまた何かを食べながら愛を伝える粋なシーンとなっていた。

 幽助の「結婚しよう」に対しての返事は明らかにされていないものの、二人の気持ちは言葉に出さなくても通じているようにも見える。エンディングでは思わせぶりな展開で終わっているが、二人が結ばれたことは間違いないだろう。

■「しろがね、お前を愛していた」

 また思わず涙腺が崩壊してしまう愛の告白といえば、藤田和日郎氏による『からくりサーカス』(小学館)の主人公・加藤鳴海が、しろがねことエレオノールに放った名セリフも外せない。

 二人が出会ったのは、サーカスでバイトをしていた鳴海の前に、もう一人の主人公である少年・才賀勝を連れて逃げるしろがねが現れた場面。そこから自動人形との残酷な戦いが幕を開け、物語後半は「からくり」のタイトル通りいくつもの歯車が絡まるように怒涛の展開を迎える。

 死にかけたことで記憶を失い、そして再び出会った彼女に対して鳴海はある理由で憎むようになっていた。かつて心を通わせた二人が結ばれないどころか、敵意まで抱いているという状況のまま戦いは最終局面を迎え、そこで鳴海はそれまで溜め込んでいた感情をようやく爆発させる。

 そして、しろがねに向かって「サーカスのテントではじめて会った時からずっと、しろがね、お前を愛していた」と、本当の気持ちを口にして抱きしめたのだ。数々の難局を乗り越えてきたからこそ、鳴海の告白にはグッとくるものがある。その後にしろがねが涙を流しながら笑顔を見せた大コマを含め、ここを同作の一番好きなシーンに挙げる読者も多いのではないだろうか。

 バトル漫画の主人公にも、気になる存在というものはいる。そして、命懸けで多くの人間のために戦っているからこそ、読者も結ばれてほしいと思うはずだ。

  1. 1
  2. 2