1980年代の後半は、昭和の終わりと平成の始まりで慌ただしかったものだ。ファミコン全盛期ともいえる当時、子どもたちを恐怖に陥れたゲームが存在する。ゲーム画面の描写が頭から離れず、夜眠れなくなった思い出も……。
そこで、筆者のなかでトラウマ級に怖かった人気作の衝撃シーンを振り返ってみたい。
■吉本芸人登場も真面目な本格ミステリー!OPが怖かった『さんまの名探偵』
まずは、1987年にナムコ(のちのバンダイナムコエンターテインメント)から発売された『さんまの名探偵』だ。
当時、『オレたちひょうきん族』や『笑っていいとも!』など全国区の番組で人気絶頂だった若手タレントの明石家さんまを探偵役に抜擢し、今では大御所だが当時売れっ子だった吉本芸人が多数登場するユニークな設定だった。
しかも、意外にもしっかりしたミステリーでストーリーも面白い。ただ、30代まで大阪で過ごした筆者なら分かるが、当時は今のように全国的に吉本芸人が活躍しているわけではなかったので、テレビで観ないと知らない人も多かっただろうと思う。
このゲームはOP(デモ画面)から桂文珍が殺害されるのだが、まったくの無音で文珍が襲われる模写が徐々に大きくなり、「なにをするやめろ!」から「ギャー」という絶叫(無音)とともに、枠内から赤い血を演出するかのようなカーテンと不気味な効果音で殺人事件が起きたことを連想させる。
これがすごく怖かった……。やはりファミコンの音源というのは、シンプルなだけに心に突き刺さってくるものがある。しかも、この効果音が作中に何度も登場するので、心臓が止まりそうになるほどだ。
主人公やさんまが襲われることはないので安心できるのだが、なにかアイテムを見つけただけでこの効果音が流れるから油断はできないし、作中では意外な人物が殺害されたりするので、気が抜けなかったな。
■秀逸なサスペンスドラマ『ファミコン探偵倶楽部PARTⅡ うしろに立つ少女』
次に紹介するのが、ディスクシステムの名作『ファミコン探偵倶楽部PARTⅡ うしろに立つ少女』(発売元:任天堂、開発元:任天堂とトーセの共同開発)だ。前作『消えた後継者』から2年前の設定となるので、ワクワクしたものだった。
前作もホラータッチで怖かったのだが、今作も制作陣営の気合が入っていたようで、とにかくトラウマ級に怖かった……。筆者は当時中学1年だったが、発売と同時に購入し、一人で布団にくるまって遊んでいた。前編後編の2部構成で後編は約1カ月後に発売されており、待ち遠しかったのを覚えている。
まずサブタイトルが怖いではないか。“うしろに立つ少女”って……その段階ですでに無理だぞ。でも、しっかりと練り込まれたシナリオが面白く、まったく関係のなさそうな15年前の高利貸し殺人事件とつながりが判明し、謎を呼ぶ連続殺人や急展開など、本当に一流ミステリーだった。
さらに、ふとした聞き込みから登場人物の表情が変わるのも見逃せない。とくに用務員の田崎は、怪しすぎるほど表情を変えていたものだった。
そしてなんといっても、“うしろに立つ少女”の話が怖くてたまらない。中盤にあった主人公の協力者・あゆみの証言によると、亡くなった親友の女子校生・洋子が「あなたのうしろに立っているかもしれない」と言った……というくだりは、ラストのクライマックスにつながっていて鳥肌ものだった。
現在、Nintendo Switchでもリメイク版が発売されているのでネタ明かしはできないが、真犯人が判明した瞬間の狂気とラストシーンの15年前の謎が解明される瞬間は、とにかく恐怖の連続なので、ぜひ一度プレイしてみてほしい。
当時の子どもたちが夜眠れなかった理由が分かることだろう。なによりとても秀逸なサスペンスドラマを体感できるぞ。