RPGには行く手を阻む数多くの“ボスキャラ”が登場するが、その実力は千差万別で、さまざまな特殊能力によってプレイヤーたちを苦しめてくる。いずれも強敵揃いだが、なかにはプレイヤーの精神を思いがけない方法で責め立ててくるとんでもないキャラクターが存在する。
そこで今回は、多くのプレイヤーを絶望の淵に立たせた強敵たちについて見ていこう。
■“全回復”はボスキャラの禁じ手!?『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』シドー
1987年にファミコンソフトとして発売された『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』は、前作に比べ最大3人の仲間で冒険することが可能となり、敵味方入り乱れての集団戦闘が実現するなど、着実な進化を遂げた作品だ。
本作にて最後に主人公たちを待ち構えるラスボスこそ、巨悪・ハーゴンが死の間際に召喚した“破壊の神”ことシドーだ。四本の腕と巨大な翼を持った、邪悪なドラゴンのような姿をした怪物で、実はパッケージに堂々とその姿が載っていることでも有名だ。
その実力はまさに“ラスボス”として申し分なく、すべてのステータスが最高値に設定されており、とくに高い防御力からほとんどの攻撃が通らず、通常攻撃に一定確率でねむり効果を持つ「ねむりこうげき」が付与されていたり、「ほのお」といった全体大ダメージ技を繰り出してくるため、攻撃面も隙がない。
このように圧倒的実力を誇るシドーなのだが、彼を語るうえで外せないのは、実は“回復魔法”までも使いこなすということ。なんと彼は、本作より追加された回復魔法「ベホマ」を習得し、HPを文字通り“完全回復”してしまうのだ……。
これは当初、ファミコンではボスの最大HPが255が限界であったことから、戦闘を長引かせる苦肉の策として盛り込まれた仕様らしいが、激闘を繰り広げたプレイヤーにとって、一瞬にしてラスボスのHPが全回復してしまう姿は、絶望以外のなにものでもない。
リメイク作品ではHP上限が引き上げられた影響もあり、この凶悪な仕様自体が撤廃されることとなる。ラスボスとして攻守のみならず回復までこなしてプレイヤーの心をくじいた、あまりにも隙がなさ過ぎるラスボスだ。
■武人の戦いに小細工はご法度!『テイルズ オブ デスティニー2』バルバトス・ゲーティア
2002年にPS2用として発売されたRPG『テイルズ オブ デスティニー2』では、前作の主人公とヒロインの息子・カイルを新たな主人公に据えた物語が描かれている。そんなカイルらの前に何度も立ちはだかる強敵こそ、“英雄を抹殺する”という目的で時空を飛び回り活動する武人、バルバトス・ゲーティアだ。
ボスとしての実力もさることながら、バルバトスを語るうえで外せないのは、ある特殊な“行動ロジック”だ。実は彼、プレイヤー側の行動に反応するように一定の“カウンター”を仕掛けてくるようになっているのだ。
なかでも“理不尽”とまでいわれているのが、こちらの“アイテム”の使用にかんするカウンター技である。プレイヤーがアイテムを使った瞬間、その種類にかかわらず「アイテムなぞ使ってんじゃねえ!」と叫び、使用者に大ダメージを叩き込む。その威力の高さから基本的に生き残ることは不可能で、このためバルバトス戦では一切のアイテムの使用を禁じながら戦うことを強いられてしまう。
アイテムに激怒するというまさかの行動と、彼の声優を担当する若本規夫の熱演も相まって、なんともインパクト大なカウンター技である。対峙するプレイヤーとしては絶望してしまう一方で、バルバトスというキャラクターを象徴する代表的なセリフにまでなっている。
純粋な闘争を愛するがゆえ、アイテムという小細工を良しとしない、なんとも濃すぎるボスキャラクターである。