■泣いてすっきり?「あァァァんまりだァァアァ」

 荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)も個性的なキャラが多い。キレるキャラは多いが、中でも変なスイッチが入ってキレるキャラが、第2部で登場した柱の男・エシディシだ。

 ジョセフは波紋の修行を行うためにロギンズの元を訪れると、そこにはエシディシが待ち構えていた。ロギンズはエシディシに殺されていて、ジョセフはそのままエシディシと戦うことになる。

 エシディシは波紋を覚えて間もないジョセフのことを、取るに足らない脆弱な存在と侮っていた。そのためジョセフが左手に波紋を込めた指を突き刺しても余裕の表情で、腕をねじ上げてそのままへし折ろうとする。しかしジョセフはそのとき、密かに波紋を通しやすくした絹糸をエシディシの左腕に掛けておいた。

 ジョセフが波紋を流すとエシディシの腕が切れて吹き飛び、エシディシが怒るだろうとジョセフも予想していたが、まさかのリアクションが。エシディシはポロポロと涙を流し「ううう…あんまりだ…」「あァァァんまりだァァアァ」と大号泣したのだ。

 何がスイッチになったのかも分からないほどの豹変振りで、ジョセフも読者も戸惑うばかり。そして、そこからいきなり「スッとしたぜ」と素の状態に戻るからかなり怖い。

 エシディシは泣くことで気分を落ち着けるルーティンがあるらしいが、感情の落差が激しすぎる。迂闊には近寄れない、ただならぬ怖さを感じさせるキャラだった。

■他愛もない一言で一週間ブチギレ続けた怪人

 原作・ONE氏、作画・村田雄介氏による『ワンパンマン』(集英社)にも阿修羅カブトというちょっとしたことでキレてしまうキャラがいる。阿修羅カブトは進化の家で生まれた最強の怪人で、作り出した研究者も制御できないほどの凶暴な性格の持ち主である。

 そんな阿修羅カブトの元にサイタマとジェノスが乗り込むことに。阿修羅カブトはサイタマの見た目から余裕の面持ちで近づこうとするが……体が硬直して動けない。サイタマの異様な雰囲気に、肉体が危険信号を出していたのだ。

 そしてサイタマの得体のしれない強さに興味を示し、どうやってその強さを手に入れたのかと尋ねる。するとサイタマは、「腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回、そしてランニング10km、これを毎日やる!!!」と真剣に答えたのだ。

「それは一般的な筋力鍛錬だ」とジェノスが突っ込むこの答えに、阿修羅カブトがブチギレ。一週間理性が吹き飛び、自分の意志とは無関係にひたすら破壊と殺戮を繰り返す「阿修羅モード」を発動させてしまった。真面目に質問に答えたサイタマだったが、阿修羅カブトの満足のいく回答ではなかったらしい。

 変なスイッチが入ってキレる悪役キャラは、強さこそ優れていないが読者に与える印象は凄まじい。悪役の多い中で、キャラ立ちして目立つというところでは成功していると言えるだろう。他にも変なキレ方をするキャラは、まだまだいそうである。

  1. 1
  2. 2