2022年も残りわずかとなった。年の瀬に差しかかってふと思い出すのは、「23年前の今ごろは大騒ぎだったな」ということだ。年が明けて1999年から2000年に変わることにより世界的規模でコンピューター関係の不具合が起きると懸念された「2000年問題」が取り沙汰され、多くの関係者がもしもの事態に備えて眠れぬ夜を過ごしたという。
今にして思えば笑い話だが、20世紀の終盤、特に1999年は『ノストラダムスの大予言』の影響で、ちまたにはさまざまな「世紀末思想」の本や番組などがあふれていて、人々はそれを娯楽として楽しみつつも、そこはかとない不安を感じてもいた。予言では「恐怖の大魔王」が降臨すると言われていた7月には何も起こらなかったものの、「2000年問題」では“信号が止まる”とか“機械が誤作動する”といった、生活に直結するさまざまな問題が起きるのでは、という情報がマスコミなどでまことしやかに囁かれていたのだ。
こうした社会情勢を反映してか、アニメでも「滅亡」や「閉塞」など「世紀末」を感じさせる作品がいくつかあった。その中から、筆者の印象に強く残った「1999年に放映された世紀末アニメ」をいくつか紹介したいと思う。
■冒険はここから始まった! 子どもたちとデジモンの成長がリンクする『デジモンアドベンチャー』
まず最初に紹介するのは、東映アニメーション制作で1999年3月から2000年3月に放映された『デジモンアドベンチャー』だ。『デジモン』シリーズのテレビアニメとしては第1作となるが、2020年のリブート作品『デジモンアドベンチャー:』と区別するため「初代」や「無印」などと呼ぶファンも多い。
サマーキャンプに来ていた7人(のちにもう1人が加わって8人となる)の子どもたちが「デジタルワールド」に迷い込み、パートナーとなる「デジモン」と出会い、ともに戦いながら成長するSF冒険アニメ。今でこそ異世界転生・転移をテーマにした作品は珍しくないが、当時は「世紀末に描かれた『十五少年漂流記』」とも称されていた。
本作では「両親の離婚」や「死別による養子」など厳しい現実を背負うキャラクターが多く、当時の子ども向けアニメとしては珍しかったと記憶している。子どもたちの秘めた悩みがパートナーデジモンや仲間との絆により解決し、互いに成長していく姿がデジモンの「進化」とも重なるという、設定とストーリー展開ががっちり噛み合った演出が秀逸であった。