©FUNA・講談社/「ろうきん」製作委員会
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 天涯孤独となった18歳の少女が、世界間を“行き来”できる能力を手に入れ、タイトル通りの目標に向かって驀進する異世界コメディアニメ『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます(略称:ろうきん8)』が、2023年1月7日より放送される。本作で、主人公の山野光波(ミツハ/CV.長江里加)に大きな影響を与えた一癖も二癖もある兄・剛史を演じているのが、人気声優の福山潤。タイトルからして個性が溢れているに違いない本作には、他にも思わぬ面白さが隠されているようだ。

■散りばめられた懐かしい昭和の小ネタやオマージュ

 美少女なのにアグレッシブな策略家・ミツハの快進撃を描く本作で監督を務めるのは、様々なアニメ作品で演出を手掛けてきた玉田博。アニメ化の発表時には「人生経験で培われた幅広い想像力を駆使してご鑑賞いただければ幸いです。」と、一筋縄ではいかなそうなコメントを寄せているが、福山から見た玉田監督はどのようなクリエイターなのだろうか。

「コロナ禍ということもあり、監督と顔を突き合わせて作品の方向をお話しするようなことはできていないので、直接の印象というのはちょっとわからないんです。その分、台本と作られた映像から、監督が何をしたいのかを感じ取っていきました。最初から感じたのが、今の流行りではなく昔のネタをかなり入れてきているなということ。扱っている題材は現代の子向けのものなんだけど、ネタとしては僕らの世代より上の人たちがわかるものが入ってます。僕は『みんな知ってるのかな?』と思ったけど、今の人たちがそのネタをわからなくてもいいんですよね。セリフとしては成立していて、作品を観るのに支障はないし、今ならスマホで調べればどの作品のオマージュなのか、元ネタは何なのか、すぐにわかりますから」

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 福山は1978年生まれのミドフォー世代。ということは、60~70年代の作品へのオマージュが含まれているのだろうか。具体的なタイトルを挙げてもらった。

「色々ありますが、わかりやすいものだと『ルパン三世』や『ガンバの冒険』。あとは時代劇も入ってきますよ。みんなが『桃太郎侍』と勘違いしやすい、『破れ傘刀舟悪人狩り』。“叩っ斬ってやる!”という決めゼリフが有名な作品ですね。僕もリアルタイムではなく、再放送などで見知っていた作品たちです。でも、そういうネタを入れるのって“楽しいから”“好きだから”だけじゃなくて、おそらく“知ってほしい”という想いもあるんじゃないでしょうか。興味を持って調べて、ちょっと観てみようとなる人もいるかもしれない。それなら入れる意味はあるよねって。それに、自分が知らないことでも楽しそうに話しているのを聞くと『それって面白いものなんだ』と感じてくれることもあるじゃないですか。そういう色々な想いや狙いが入っているんじゃないかと、僕は捉えてますね」

 異世界ファンタジーとファイナンシャルプランの掛け算という令和アニメの中で、懐かしい昭和の小ネタやオマージュを探してみるのも面白そうだ。

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■極論を言うと、1日前の自分と1日後の自分は別人

 声優として活動を開始してから25年を超え、『コードギアス 反逆のルルーシュ』『暗殺教室』『おそ松さん』など、代表作を挙げたらキリがない福山。彼の視点の鋭さや、作品や人物への深い洞察力は、ただ作品に出演しているだけで養われたものではない。

「普段から色々考えることが好きなんですよね。答えを教えてもらっても、自分の中にその答えを導くための証明文がない状態だと、あまり意味がないじゃないですか。だから、ふいに知った答えに証明文を作れるような状態にしたいなということで、自分のいろんな感覚を知るようにはしています。例えば、なぜ若いときと今とで自分はこんなに違うのか。その理由を“経験”という一言で片付けてしまうと、あまりに範囲が広いので、より具体的な言葉を探したり。どんなジャンルでも何か作品を観たとき、自分が何を感じているのか、何を面白いと思うのか、そう感じるのはなぜなのか。その“なぜ”を常に問い掛けるようにしています。『この作品、好きだな』と思ったときに自分の中に生まれた感情、もしくは高揚、興味。それは一体なぜなのか、出発点を探るようにしてますね。それが他人を演じるときに使える要素になってくるんです。だから他人を知ることも必要だし、そのためにはまず自分を知る必要がある」

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 そうして自分に問い掛け、形にならない感情を言語化し、演じることに向き合い続けているからこそ、福山は多くの作品で求められ続けている。しかし長年続けていても、まだ新しい自分に出会うことがあるのだろうか。

「自分の新しい一面に気付くことなんて、しょっちゅうですよ。極論を言うと、1日前の自分と1日後の自分は別人ですからね。どうなるかなんてわからないし、そのとき感じた今までとの違いは、これまでの積み重ねがあったからこそ。ということは、その気付きにこれからの自分のヒントがあると思うんです。若い頃は『あんなこと言っちゃった……』とへこむことも多かったんですが、そんなことを言ってしまった理由が重要で、そこで気付くこともあると思えばマイナスの経験とも言い切れない。そういう自分への向き合い方もありなんじゃないかな、と思ってはいますね」

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