■あらゆる苦痛から解放される幸福感は中毒性抜群!「ヘソリンスタンド」
次に紹介するのは、ガソリンスタンドをもじったユーモラスなネーミングのひみつ道具、「ヘソリンスタンド」(てんとう虫コミックス第25巻で登場)だ。名前からすると、元気をチャージしてくれそうなイメージだが、それは半分は当たっていて、半分は間違っている。
「ヘソリンスタンド」は、ヘソリンガスという、吸うと苦痛を感じなくなるガスを体内に注入することができる。ヘソリンガスを吸った人は、肉体的にも精神的にも苦痛を感じなくなるだけでなく、幸せな気持ちになる効果も得ることができるのだ。
その効果だけを聞くと、様々な苦痛から解放される素晴らしい道具じゃないかと思えるのだが、ものには限度というものがある。ヘソリンガスの恩恵を受けて、一切の苦痛を感じず幸福感に満ちた人たちは、何かと無謀な行動を取るようになってしまうのだ。
車に轢かれても、バットで殴られて気絶しても、皆がニコニコしている。もちろん、肉体的・精神的な苦痛からは解放されても、物理的には効き目はないわけで、死者が出なかったのが不思議なくらいだ。
下手をすれば命に関わる怪我をしたりする危険があるのに無茶な行動に歯止めが効かなくなるというだけでなく、自然と依存するようになった使用者は、続々といわば「ヘソリンガス中毒」になってしまう。そう、まさに現実での麻薬に近い使われ方をしてしまったのだ。痛みを感じることによって人間は身の危険を感じたり適切に行動を制御することができる、という教訓が得られる秀逸なエピソードだ。