■浮ついてないでバスケに集中して!『あひるの空』藪内円
藪内円は、日向武史氏のバスケ漫画『あひるの空』(講談社)に序盤から登場するヒロイン的なキャラクターで、主人公の車谷空が憧れる先輩でもある。
バスケ一筋の空は恋愛には奥手ではあるが、円に惹かれており「好きです」と告白もしている。円も空のことを気にかけている描写が多く、もしかして……と思うような言動もあるが、実際には恋愛感情は持っておらずあくまで可愛い後輩としてのものに留まっている。
結局、空の告白に対する返事はうやむやなままになるのだが、実は円は空と同じ男子バスケ部キャプテンの花園百春に好意を持っており、部室を炎上させてしまった百春が落ち込んでいた際にはデートにも誘っている。
しかしこのとき、自分のせいで部室が燃えてしまった自責の念に駆られていた百春は、円の誘いに激怒して泣かせてしまう。
そのことでショックを受けた円は、女友だちに誘われたカラオケで合コンのような状態になってしまい、司という男と知り合いデートするなど親密な関係に。そしてそれを耳にした百春は、円に彼氏ができたと思い込み深く傷ついてしまう。
司と付き合いかけていた円だが、結局はバスケを頑張るよう心に決め、ギクシャクしていた百春とも無事に和解した。
しかしちょうどこの頃、バラバラだった男子バスケ部の結束も固まり猛練習に励んでいる時期だったことや、他の女性キャラがバスケに集中して一生懸命努力しているシーンが多いことなどから、恋愛沙汰に気を取られてしまう円には、一部のファンからは厳しい目が向けられ、ウザイ女と称されることもある。等身大の女子高生らしいとも言えるとは思うのだが、作中では少し浮いてしまっており、心証が悪くなっているのは仕方のないことかもしれない。
『あひるの空』はまだ完結はしていない(2019年から休載中)が、百春との関係も含め、円の恋愛模様がどのような展開になるのか注目である。
魔性の魅力を持つヒロインを3人紹介したが、彼女たちに代表されるように、“魔性の女”と言われるヒロインは印象深いエピソードとともにファンの記憶に強く残っている人物が多い。作中で彼女たちに魅了される男性たちだけでなく、ファンもまた、その魔性によって魅了されたからこそ、より鮮明に記憶に焼き付いているのではないだろうか。
そう考えると、このようなヒロインたちは、物語により一層の深みを与え、恋愛描写やストーリー展開に変化をもたらしてくれる、稀有な存在であるとも言えるだろう。