■ひたすら努力する主人公に共感! 本格的なスポ根漫画『イレブン』
スポ根のサッカー漫画といえば、原作・七三太朗氏、作画・高橋広氏による『イレブン』だろう。
主人公・青葉茂は亡き父親が元日本代表で、その遺志を継いで高校からサッカーを始める。サッカー初心者とはいえ、中学時代は陸上部で足腰を鍛えていた彼は地盤ができていたのだろう。
最初は補欠扱いだったもののメンバーが揃わない弱小チームだったので、試合や練習でも経験が積みやすく、さらに、持ち前の明るい性格と負けん気で努力を重ねて徐々に名選手となっていく。
ただ、高校生からユース世代に入っていくと、茂はその先々で上には上がいることを常に知らされる。そのたびに、彼は凄まじい努力を重ねていくのだ。努力をすれば成功するとは限らないものの、必死になればチャンスをもらえることを本作は教えてくれたと思う。
筆者が好きだったのは、全国大会得点王の紅林のロングシュートだ。ドライブシュートやタイガーショットなどの必殺技は出てこないのだが、コースを狙いすまして“ここぞ”というときに放つのがカッコよかった。
あともう一つ、トゥーキックの練習風景は貴重で興味深かった。ゴールポストに当てながらコントロールを身に付けていくという練習には、新鮮味を感じたものだ。
ちなみに、漫画の中盤から後半にかけてサッカー一筋の真面目キャラに見える茂だが、初登場時は入学当日に幼馴染のスカートをめくるようなとんでもないキャラだった。……まあ、それはいいとして(よくはない)、どんな環境にも落ち込まず、ひたむきに努力をする姿はやはりカッコ良く、当時多くの少年少女たちに勇気を与えてくれたに違いない。
“サッカー冬の時代”を見てきた世代にとって、本当に日本がワールドカップに出場するなんて漫画の世界だけだと思っていた。
そう考えると、この時代のサッカー漫画は夢に溢れていた。ワールドカップで盛り上がっているこの時期、ここで挙げた3選に『キャプテン翼』も含めて、また読み返してみてはいかがだろうか。