『かっとび一斗』『イレブン』など…80年代の“サッカー冬の時代”にワクワクさせられたサッカー漫画3選の画像
『オフサイド』第11巻(講談社)

 4年に一度のサッカーW杯が開催されている。世界中が盛り上がりを見せる今、日本代表も強豪国ドイツに続いてスペインに歴史的な勝利をし、毎日のようにその活躍がテレビやネットで取り上げられている。

 しかし、筆者が小学生だった80年代、日本サッカーはまだまだ“冬の時代”だった。そんななかサッカー人気を押し上げたのは、『キャプテン翼』に代表される漫画の力もあったと思う。『キャプテン翼』は説明不要だと思うが、今回はそれ以外にも面白かった80年代のサッカー漫画を振り返っていきたい。

■弱小校を成長させていく過程に興奮! 泥臭くも爽やかな高校サッカー漫画『オフサイド』

 高校サッカーを描いた塀内夏子氏の『オフサイド』には、ワクワクさせられた。

 主人公・熊谷五郎は優しくて気の弱いタイプだが、恵まれた体格から繰り出すキックは超高校級。中学時代はゴールキーパーで一度も公式試合に勝てず(最後の練習試合では勝利)、私立川崎高校入学後、フィールドプレーヤーになってゴールを量産していく。

 弱小チームが全国区の強豪に成長していく過程が面白く、しかも漫画では珍しい「国体」についても取り上げられていて、当時夢中になった。

 ちなみに、五郎たちの同学年や後輩にはどんどん全国クラスの才能を持った選手が集まるようになっていく。その影響で驕りも生まれるようになったインターハイ予選では、決勝や準決勝で敗退するのではなく、途中(3回戦)でしっかり負けているのがリアルな展開だった。

『オフサイド』には、スペシャルな技が登場しない。等身大の選手が一生懸命活躍するからこそ、感情移入ができたのだと思う。ただ、熊谷が真面目すぎて、第一話から登場するヒロイン・伊藤渚とくっつかないというのも何だか切なかったな……。

■小さなカンフー使いの初心者が縦横無尽に強豪中学を撃破!『かっとび一斗』

 80年代は“サッカー冬の時代”とはいえ、高校サッカーは冬休みの選手権大会の人気が高かった時期だ。そんななか、1985年に破天荒な中学生サッカー漫画が登場した。門馬もとき氏の『かっとび一斗』だ。

 主人公・香取一斗は少林拳の使い手で身体能力抜群の中学生。小柄な体型でサッカー初心者の彼は、ルールを覚えられなかったり、短気でキレやすかったりと問題児のような一面も。当初は、そういった面を敵チームに攻められたりもした一斗だが、彼はそれを補って余りあるポテンシャルを秘めており、カンフーを駆使したアクロバティックな動きで周囲を翻弄していく。

 一斗の口癖は「ちょんわ!」で、この言葉が出た時には何かをしてくれるとドキドキしたものだ。体格差のハンデを持ち前のスピードと跳躍力、回し蹴りや挑発(!?)で見事に対応していく。

 この漫画は一斗のチームメイトである由良和馬や宗近真だけでなく、ライバル勢たちも皆個性豊かで、のめり込んだことを覚えている。

 練習試合を除き全国大会の決勝でしか戦う機会が持てない、天才・宗近暁(真の双子の兄)、地区予選で激突したナンバーワンGK・里美伊緒など、彼らは一斗と互いに成長しながら闘っていくため、見ているこちらの感情も入りやすい。

 ちなみに、筆者は里美のローリングキャッチを真似しようとして突き指したことがあった。当時『かっとび一斗』を見ていた人はきっと分かってくれるだろう……。

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