冨樫義博氏の『幽☆遊☆白書』は、1990年から1994年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載されていたバトル漫画。2023年12月に北村匠海主演の実写版がNetflix配信予定であることからもわかるとおり、完結から長い時が経った今なお愛され続けている作品だ。
数多くの魅力的な描写であふれている本作だが、なかには“あえて描写されていない”ことが想像力を掻き立てるシーンもいくつか存在する。今回はそんな“描かれていないからこそ気になるシーン”について紹介していこう。
※本記事には『幽☆遊☆白書』の一部内容が含まれます。ネタバレを主目的とはしていませんが、まだ作品を読んでいない方、ご自身で展開を確かめたい方はご注意ください。
■まったく想像がつかない……蔵馬が海藤との戦いで見せた変顔
まず紹介したいのは蔵馬が作中で見せた“とある表情”である。おそらく同じように、“このシーン”を思い浮かべた読者も多いことだろう。
原作漫画の13巻にて、蔵馬は“禁句(タブー)”という能力を持つ海藤優と戦うことに。海藤は能力を使って自身の領域を展開し、そのなかで彼が設定した“禁句(言ってはいけないこと)”を口にした人物の魂をとることができる。行動をともにしていた飛影と桑原、ぼたんが早々に禁句を言ってしまったため、蔵馬は彼らの魂を取り戻そうと一対一の勝負に挑む。
蔵馬は海藤に対し、“自分に禁句を決めさせてもらえれば45分以内に勝ってみせる”と断言。そんな彼が設定したルールは、“1分ごとにあいうえお順に五十音が使えなくなっていく”というものだった。
使える文字が「わ」「を」「ん」の残り3つだけになったとき、蔵馬は勝負をしかける。隙を見て姿を隠し、背後から海藤を「わ!!!!!」と脅かすことで悲鳴を出させようとしたのだ。だが当然、海藤もそれを想定済みで、なんとか驚きの声をこらえることに成功する。
しかし、それで終わりではなかった。残り時間わずかとなったことから勝利を確信し振り返った海藤は、蔵馬の“変顔”を目の当たりにする。そしてその直後「あはははは」と大笑いしてしまったことにより、禁句を口にしたと見なされ敗北した。
蔵馬が変顔を披露したシーンは後ろ姿しか描かれておらず、その表情はまったくわからない。しかし緊迫感にあふれた勝負のなか、海藤が涙を流すほど大笑いしたのを見ると、ちょっとやそっとの代物ではなさそうだ。いったいどれほどの変顔なのか、普段優雅な蔵馬だからこそ気になって仕方がない……。
■どれほど過酷だったのか…暗黒武術会に向けて幽助が積んだ特訓の全貌
作中での時系列はさかのぼるが、暗黒武術会の前に幽助が積んだ修行も気になる。裏社会の武闘大会である「暗黒武術会」に参加することになった幽助は、敵である戸愚呂弟の強さを目の当たりにし、戦慄する。そして自分ももっと強くなりたいと願い、大会までの2カ月間、師匠である幻海のもとで地獄のような特訓を積むのだ。
この際、幽助がどんな修行をしたのかは一切明かされておらず、謎に包まれている。しかし飛影が彼を試す意味でいきなり切りかかった際、フラフラの状態だったにもかかわらず攻撃をすべてよけきっていることからも、幽助が以前と比べてかなり強くなっていることは明らかだ。
またその後、幽助は眠り込んで何をしても起きない状態になってしまい、蔵馬もそれを見て「……よほどすさまじい特訓をしたんだろう」と推測していた。
ちなみに、暗黒武術会の少し前、幽助が幻海から“霊光波動拳”の基礎を叩き込まれたときの修行については、少しだけ描写がある。指一本で針の上に逆立ちしたり、霊波動で吹っ飛ばされたり、さらに火の上での座禅や針山の上での睡眠など、想像するだけで痛そうだ。
これ以上に過酷な特訓となると……見てみたいような、見てみたくないような、なんとも複雑な気分である。