■男子女子ともに人気だったレジェンド級特撮番組『美少女仮面ポワトリン』
恐らく一番有名な東映不思議コメディーシリーズであろう作品が美少女シリーズ三作目となる『美少女仮面ポワトリン』だ。平均視聴率15%を記録した人気番組ということだけでなく、2012年には現代向けにリニューアルされたポワトリンが仮面ライダーウィザード&フォーゼとともに映画『MOVIE アルティメイタム』にゲスト出演をしていた。昭和時代を知らない若い特撮ファンでも知っている人は多いのではないだろうか。
また現在放送中の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(テレビ朝日系)では、ドン22話「じごくマンガみち」で「ポワトリン」をモチーフとしたネタが組み込まれた。鬼頭はるかがソノザに漫画の続きを無理やり描かされるというエピソードで、妄想した漫画「新章 初恋ヒーロー」の中でオニシスターが「ポワトリン」風の仮面姿に変身するというもの。まさかの令和の時代に同作のパロディネタが出たことでSNSでもすぐに話題となり「ポワトリン」が一時トレンド入り。それだけ特撮ファンにとって重要な作品のひとつなのだ。
前作までの中華風から一変し、同作のモチーフはフランス。花島優子さん演じる普通の高校生だった主人公・村上ユウコが、初詣で訪れた神社で美少女仮面ポワトリンに変身する能力を授けられ町内にあらわれる怪人たちと戦うという物語。変身した後の姿はアラン・ドロンの「怪傑ゾロ」をモチーフとしており、白のミニのワンピースに赤いマントを羽織り、マスクをつけて正体を隠している。この姿がシリーズ中でも屈指のかっこよさで、「愛ある限り戦いましょう。命、燃え尽きるまで」というキャッチーな決めゼリフも秀逸。男子女子ともども人気があった作品。
同作が後のアニメや特撮に与えた影響は大きく、『美少女戦士セーラームーン』の漫画家・武内直子氏は、セーラームーンを書くにあたって、ポワトリンの影響を強く受けていると語っている。特撮作品全体としても美少女ヒロイン作品としても、レジェンド級の作品なのだ。
そしてその後、エジプト風のヒーロー『不思議少女ナイルなトトメス』、浦島太郎をモチーフとした『うたう!大龍宮城』が作られ、1993年の『有言実行三姉妹シュシュトリアン』で「東映不思議コメディー」は幕を閉じる。
近年では『アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!』をはじめとするガールズ×戦士シリーズも人気となり、女性キャストをメインとした特撮作品が増えている。「東映不思議コメディー美少女シリーズ」復活の日を待っているのは筆者以外にも少なくないはずだ。