■いい奴すぎる主人公!『呪術廻戦』の“小沢さん回”

 最後に、人間の負の感情が生み出した化け物「呪霊」との戦いを描いた、芥見下々氏の『呪術廻戦』。来年、アニメ2期の放送が決定している。1期の放送では作者書き下ろしの日常エピソードがコーナー化されていたが、原作では日常回が極めて少ないのが特徴的だ。そんな貴重な日常回から、主人公・虎杖悠仁と中学時代の同級生・小沢優子が再会したときのエピソードを紹介したい。

 任務の後、虎杖の同期・釘崎野薔薇は小沢から声をかけられる。「さっき」「虎杖君と一緒にいませんでした?」と。中学時代、小沢は虎杖のことが好きだったが、自分が太っていたことなどあって、連絡先を聞けないまま卒業してしまった。しかし現在は痩せて身長も伸び、当時の面影もないほど垢抜けて、「今の私ならもしかしたら」と思ったのだという。

 それを聞いた釘崎は小沢に協力するため虎杖を呼び出すが、うっかり小沢の変貌ぶりを伝え忘れてしまう。慌てて説明しようとする釘崎をよそに、すぐに「小沢じゃん」と気づく虎杖と、なんともいえない表情を見せる小沢。

 虎杖は人のことを“デブ”だとか“可愛い”だとかで判断しない。だから外見が別人のように変わった小沢にも、すぐに気づくことができた。そういうところに惹かれたはずなのに、“可愛くなれば振り向いてくれる”と、小沢もいつのまにか外見だけでものを見ていた。そのことに気づいた小沢は、結局想いを告げることなく虎杖たちと別れるのだった。

 小沢にとっては苦い思い出となったが、この虎杖のいい奴っぷり! 気持ちの良い青年を見ると、どこか心がほんわかしないだろうか。また呪いをテーマに描いている作者の、人間に対するどこかシニカルな視点もよく伝わるエピソードだ。

 

 派手でカッコ良くてワクワクさせてくれるバトル漫画。でも、実は細部に作者の感性や価値観が反映されていて、じっくり読むとさらに面白い。疲れたときには、バトルの間にある細やかな日常に目を向けてみて、そのギャップを楽しんでみるのも良いかもしれない。

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