■並んでも買えないソフトは聞き込みして冒険へ
“社会現象”とまで言われたのが、1988年に発売された『ドラゴンクエスト3』(スクエアエニックス)だった。発売日が平日だったため、学校を休んでまでお店に並ぶ学生が多発した件である。
大きな問題となったものだが、筆者の経験だと、ドラクエ3よりもドラクエ2のほうが大変だった気がする。ドラクエ2は初代ドラクエからスパンが短く、記憶が鮮明なうちに続編が登場することになった。船で移動やパーティーバトルといった、前作から大きくスケールアップした内容が事前に紹介されていたため、ワクワクしながら発売日を待っていたものである。
当時から、たぶん並ばないと買えないだろうという雰囲気がすでに蔓延していた。しかし、ドラクエ2の発売日は1987年の1月26日で、なんと月曜日だったのだ。
昼間のうちに親に買いに行ってもらわないと売り切れる可能性もあるが、もちろん無理な話だ。『妖怪ウォッチ』が羨ましいぞ……。
幸いにも、お年玉を残していたのでソフト購入資金は問題なかった。学校が終わり、急いで地元のスーパーにあるおもちゃ屋にダッシュしたのだが、着いてみればすでに長蛇の列!
カウンターを取り巻くように最後尾に並んだ。待つこと数十分、筆者の10人ほど前で「すみません。もう品切れです」と、いきなり売り切れのアナウンス。女性店員の申し訳なさそうな声が響いた。
いや、もっと前から分かるだろ?と当時は思ったものだが、今考えると、店側も全員がドラクエを買いに来たとは思っていなかったのだろう。ゲームに興味のない人が、レジや売り場を担当していたのかもしれない。
すぐさま店の外へ出て、情報収集に入った。とはいえ、当時は携帯もないため情報は聞き込みだ。同世代の見知らぬ少年たちに声をかけて「ドラクエ2売ってた?」と聞いて回り、「あそこにはあった」「◯◯が在庫あるって」など、裏も取れない情報を頼りに自転車で冒険へ旅立ったものだ。
……しかし結局、どこも売り切れだった。世の中、金があっても買えないものがあるんだと悟ったものだ。