■“物欲”は“友情”よりも強し?『ジョジョの奇妙な冒険』矢安宮重清
人間はさまざまな「欲」を持つものだが、なかでもわかりやすく人間関係をこじらせるのは、やはり「金銭欲」だろう。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載されていた『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部に登場する、矢安宮重清こと「重ちー」もそんな分かりやすい「欲」にとりつかれてしまったキャラクターだ。
重ちーは主人公・東方仗助らと出会い、当初は同じ「スタンド使い」という共通点を持つ友人として親交を深めていくのだが、仗助たちが500万円の宝くじの当たり券を手にしたことで、その友情に陰りが見えるようになる。金に目がくらんだ重ちーは、宝くじを独り占めしようと自身のスタンドを使って、仗助らと敵対するのだ。
スタンド「ハーヴェスト」を使った奇抜な戦法で一時は優位に立った重ちーだったが、頭の悪さを逆に利用され形勢逆転……あえなく打倒されてしまう。仗助らにお灸をすえられたことで結果的に我に返ってもとの鞘に収まることができたのだが、行きすぎた「強欲」のせいで危うく死闘にまで発展しかけてしまった、未熟な精神の危うさを孕んだキャラクターである。
主人公らの仲間として友情を育んだキャラクターがさまざまな理由で「敵」として対峙するシーンは、かつての友好的な姿を見ているだけに読者としても複雑な心境になってしまう。
一方で、無力に思えたキャラクターが意外なパワーアップを遂げるという点も、漫画のどんでん返しとしては非常に面白い点でもある。弱かった彼らがどのような力を身に着けて立ち向かってくるのかも、漫画における見どころの一つといえるだろう。