■名作ゲームを超えた感動のストーリー『DRAGON QUEST-ダイの大冒険-』

 大ヒットしたゲームの世界観が漫画に持ち込まれるのはよく見かけるが、これほどまでに感動を呼び込む名作も珍しい。それが『DRAGON QUEST-ダイの大冒険-』(監修・堀井雄二氏、原作・三条陸氏、作画・稲田浩司氏)だ。

 世界観はもちろんファミコンで大ヒットした『ドラゴンクエスト』であり、モンスターや呪文、武器、アイテムもゲームとほぼ同じ演出になっている。

『ダイの大冒険』の何が凄いかというと、登場人物の成長と伏線の回収だろう。

 勇者ダイは格闘漫画などに登場する主人公そのもので、死闘や修行を繰り広げながら肉体的・精神的に凄まじい強さを身に付け、本物の勇者に成長していく。また、臆病で頼りない仲間の魔法使いポップも勇気を振り絞りながら成長し、ともに大魔王・バーンとの最終決戦に臨むのだ。

 そして、本作は伏線の回収が秀逸すぎた。筆者がとくに感動したのは、“神の涙”ことスライム「ゴメちゃん」の存在だ。物語のスタートから常にダイたちの冒険にかかわる可愛いゴメちゃんだが、最終決戦でその秘密が明らかになるという展開。「原作者は天才か!」と、当時盛り上がったものだった。

 1996年当時は大魔王・バーンとの対決が佳境に入ったころで、年内に完結を迎えることとなる。

■みんな真似した独特なポーズ! 大ロングセラーとなった『ジョジョの奇妙な冒険』

 1996年の時点ですでに第5部まで進んでいた、荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』も外せない。「ジョジョ立ち」と呼ばれる独特の決めポーズや名言が飛び交い、令和の時代に入っても人気が衰えない言わずと知れた名作だ。

 本作は、ジョースター家と宿敵DIOとの長き因縁を描いたストーリー。『ジャンプ』的に人気が爆発したのは、第3部のスタンド編からだろう。第5部はDIOの息子のジョルノ・ジョバァーナが主人公で、舞台はイタリアにうつり、名作映画の『ゴッドファーザー』の世界観が垣間見える描写もあった。

 全編を通してとくに好きだったのが、第1部のディオの登場シーンだ。止まった馬車からバッグを投げ落とし、カッコよく飛び降り、「バァーン」という効果音とともにカメラ目線でばっちりキメる。このシーンだけで、なんと2ページも使っているのだ。一瞬にして『ジョジョ』の独特な世界観に引き込まれてしまった読者も多いだろう。

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