劇中では、内海賢二さんはじめ、羽佐間道夫さん、野沢雅子さん、山寺宏一さんら、内海さんを知る声優陣が登場し、その思い出を語り合う一幕もある。
内海:出演オファーのほうは、僕から声をかけさせていただいたのですが、皆さん二つ返事で出てくださいました。
榊原監督:皆さん、内海さんのことをお話されるとき、すごく嬉しそうに語ってくださいましたね。山寺さんは本作の撮影前にご挨拶をしたところ、「こういうふうに内海賢二さんのことをお話させてくれる場を作ってくれて、本当にありがとうございます」と笑顔で仰ったんです。本当に内海さんが愛されているのを感じましたね。同時に、取材させていただいた方は、僕自身尊敬している声優さんばかり。だから、みなさんカッコ良いなと思いましたし、いち声優ファンとしてそのカッコ良さをあらためて世に届けたい思いでした。
「本当の内海賢二になる前に死んでしまった」
賢太郎氏は、生前に父のマネージャーも務めていたが、前述のとおり映画の撮影を通して、様々に「声優・内海賢二」の姿を知ったという。とくに内海賢二さんを上京時代から知る、声優・柴田秀勝さんの言葉は胸を打つ。
内海:あの声による「強くて男らしい」みたいな内海賢二というのは、彼の中の理想像でもあったのだろうとは思います。これは父の兄に聞いたのですが、父は若い頃、友達とお寿司屋さんでバイトをしていたそうなんですね。そこで友達が店のお金をくすねてしまった。だけど、父は俺がやりましたと言って、タダ働きをしていたそうで。そこは柴田秀勝さんの「あいつは内海賢二を演じていて、本当の内海賢二になる前に死んでしまった」という言葉がすごく的確に父を表していると思います。