2022年10月13日よりフジテレビ系「ノイタミナ」枠で、36年ぶりにテレビアニメ『うる星やつら』が放送開始となる。同作の原作は1978年より『週刊少年サンデー』で連載された高橋留美子氏の漫画作品。高校生・諸星あたると、彼を一途に愛し続ける美少女宇宙人・ラムが、近隣住民や学園を巻き込んで大騒動を繰り広げるSFコメディだ。
同作だけでなく、『めぞん一刻』『らんま1/2』『犬夜叉』など多くのヒット作を生み出している高橋氏だが、ドタバタコメディやラブコメの裏で読切や短編作などではサスペンスやホラーを発表しており、同じ『サンデー』誌上で活躍する有名漫画家に大きな影響を与えている例もある。
そこで今回は『うる星やつら』放送を機に、高橋氏の“もうひとつの顔”でもある「初期ホラー作品」を振り返り、その魅力を紹介していきたいと思う。
■孤独な少年の独占欲が凶器となって襲い来る『闇をかけるまなざし』
まずは、1982年に発表された短編漫画『闇をかけるまなざし』。当時、『うる星やつら』や『ダストスパート!!』などを描き、ギャグやコメディ色の印象が強かった高橋氏が挑んだ初のホラー作品である。
女子高校生の郁美は、病院で入院している少年・瞳(ひとみ)とひょんなことで出会う。母親と死別していた瞳は、父親の仕事が忙しくいつも病室でひとり過ごしていた。そんな瞳の境遇に同情した郁美は交流を持つようになるのだが、彼氏である大輔とともに見舞いに行ったところ、その後大輔の周囲で奇妙な出来事が起こるようになるという物語だ。
友だちと呼べる存在が小鳥しかいない少年に、ある日思いもかけずやさしく接してくれた郁美という存在。病院のベッドの上で日に日にやせ細っていきながらも、郁美を独占するため超能力を暴走させる瞳の姿はどこまでも孤独で寂しい。最後のページの、瞳と小鳥との対比も切ない短編だ。
なお『闇をかけるまなざし』について、『うしおととら』の作者である藤田和日郎氏は、18歳の頃にこの作品を読んで漫画家を目指すようになったと公言しており、公式ツイッターでも「読みに読み込んだ」と『少年サンデー』に掲載した高橋留美子短編のキャライラストをアップしている。その後の『サンデー』作家にも影響を与えた高橋留美子氏の初期短編がどのようなものか、未読の方にはぜひ手にとってもらいたい作品だ。