■『ドラゴンクエストVI 幻の大地』よりバーバラ

 バーバラは、ミレーユの後に仲間になるおてんばで気さくな印象を受ける小柄な少女だ。月鏡の塔で、記憶喪失ながらにラーの鏡を探し、さまよっている精神だけの彼女と出会う。その後、ハッサン、主人公と次々に実体を取り戻していく仲間の中、唯一彼女だけが実体を見つけることができなかった。

 彼女の正体は、魔法都市カルベローナの創設者バーバレラの子孫。しかし、現実世界では、カルベローナは魔王デスタムーアによってすでに滅ぼされているため、彼女は夢の世界にしか存在しない夢の世界の住人だった。

 現実世界と夢の世界とを行き来できるようにしたのは、デスタムーアだった。つまりデスタムーアを倒せば、仲間ともう会えなくなってしまう。そんなデスタムーアを倒すための究極魔法マダンテが彼女に託された。

 デスタムーア討伐後、彼女は、自分が仲間と別れなければならないことを理解していた。「さみしいけれどそろそろおわかれの時がきたみたいね……」と消えていった彼女を見送るしかなかった切なさを、今でも鮮明に思い出せる読者は多いのではないだろうか。

 今回3人を選出したが、他にも悲しい背景を抱えたキャラや、悲惨な人生を送るキャラは数多い。彼らの存在は、ただ「かわいそう」と一言で終わるものではなく、物語を悲しくもリアリティのある共感できるものへと変貌させ、プレイヤーの心を豊かにしてくれる。細かく作られたセリフや演出は、あらためて『ドラクエ』の奥深さを感じるものばかりだ。

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