■掲載作家の「けもこびる」や「ケン吉」はあの有名漫画家!? 漫画情報雑誌として試行錯誤をくり返し続けた『ぱふ』
80年代90年代を過ごしたアニメファンであれば、雑草社が発行していた漫画情報誌『ぱふ』も愛読していたという人が多いのではないだろうか。
1974年に清彗社から前身となる雑誌が創刊され、その後たびたび誌名を変えながら1979年1月号から『ぱふ』へと落ち着いた。後に清彗社は2つに分裂し、『ぱふ』や小説情報誌『活字倶楽部』を雑草社が、漫画情報誌『COMIC BOX』をふゅーじょんぷろだくとが刊行するようになる。
創刊当初は大学の漫画研究会などの漫画を掲載していたが、その中にはデビュー前の高橋留美子氏が「けもこびる」、柴門ふみ氏が「ケン吉」名義で執筆。さらに1980年代の一時期に『ああっ女神さまっ』などで知られる藤島康介氏が編集者として在籍し、4コマ漫画の連載やイラスト執筆などを担当していた。
編集による「コミックレビュー」や企画頁など質の良い読み物が充実していたのだが、筆者が何よりありがたいと思ったのが単行本の発売日が書かれた「コミックリスト」の存在だ。当時はメジャー作品以外の発売情報がなかなか分からず、リストから自分の好きな作品タイトルを見つけたときのうれしさは今も記憶している。
また、誌面では商業作品以外に、オリジナル作品を扱った「同人誌」にも注力。各地で開催される「同人誌即売会スケジュール」や「同人誌紹介コーナー」を掲載し、その縁から日本最大規模のオリジナル創作を中心とした同人誌即売会「コミティア」が誕生した。
漫画文化をけん引し続けて来た「ぱふ」であったが、2011年8月26日に公式サイトにて休刊を発表し、多くのファンから惜しむ声が上がった。
1980年から1990年にかけて多くのサブカル雑誌が発行されていた。だが、『アニメージュ』と同時代を歩んだ『ジ・アニメ』や『マイアニメ』などは今はなく、2000年初頭に見かけたコスプレ専門誌もネットの普及とともに姿を消したように思える。だが、ページをめくるたびに欲しかった情報を得られ、見たかったアニメキャラの「IF」の姿を楽しめた雑誌の思い出は、今も色褪せることなく私たち読者の記憶に刻まれている。