■見た目は冴えなくても実は有能!『ハガレン』ティム・マルコー

 最後に紹介したいのは、荒川弘氏『鋼の錬金術師』のティム・マルコー。彼は軍の研究機関に所属していた医療研究者兼錬金術師で、人間を材料とする“賢者の石”研究の第一人者でもある。悪役にも思える設定だが、彼はいたってフツーの中年男性であり、どちらかというと気が弱く冴えない雰囲気を漂わせている。

 非人道的な実験に参加してしまったのも上からの命令に逆らえなかったからであり、小心者ゆえ罪の意識に押し潰され、物語開始時点では軍を脱走して田舎に身を隠していた。

 そんな“地味なおじさんキャラ”のマルコーだが、作中では町医者として人々に慕われていたり、知識面でも戦闘面でも有能ぶりを発揮したりと、頼りになるキャラでもある。

 そんな彼が大活躍した瞬間と言えば、やはり仲間とともにホムンクルスのエンヴィーと戦ったシーンだろう。

 激しい戦いの中、マルコーはエンヴィーに捕まって大怪我を負わされてしまう。さらにエンヴィーは、マルコーが“人の命を使って賢者の石を作ってきた”ことをあらためて突きつけ、精神攻撃で彼の戦意を削ごうとしてきた。

 しかし、マルコーは「そうとも この国の誰よりも石の作り方をよく知っている」と、自分の罪を認めたうえで、「作り方を知っているという事は壊し方も知っているという事だ!!!」と吼える。そして、エンヴィーの持つ賢者の石を破壊し、彼を弱体化させることに成功した。

 過去を悔いて逃げ回ったり、自ら命を捨てようとすることもあったマルコーだが、物語終盤では真正面から立ち向かい、強敵に一矢報いてみせたのである。

 

 ほかのキャラたちのなかに埋もれてしまいがちな“地味キャラ”。彼らは普段あまり目立たない存在だからこそ、ここぞというときに活躍し、とんでもないギャップで読者や視聴者を魅了する。あなたの心には、どんな地味キャラの活躍シーンが残っているだろうか?

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