■重すぎた死がアニメで書き換えられるケースも

 同じく、子ども向けのアニメには、原作での死があまりにも重すぎたがゆえの配慮と思われる生存キャラが多くいる。

 つの丸氏による競馬漫画『みどりのマキバオー』で、主人公のマキバオーとともに長い時間を過ごし、彼の頭の上で叱咤激励し続けたネズミのチュウ兵衛もそうだ。

 コミカルなタッチとは裏腹にシリアスな描写も多い同作。チュウ兵衛は皐月賞のレース中に落馬してしまう。脊椎を損傷する重体となりドクターストップもかかっていたが、続く日本ダービーで、いまいち本気を出しきれないマキバオーを見かねて最後の直線でいつものようにマキバオーの頭の上に乗り熱い活をいれた。しかしその無茶がたたって、レース後には命を落としてしまう。

 アニメでは日本ダービー後も生存しているが、これ以降チュウ兵衛は引退を決意し、後方でサポートに回るようになっていた。

 また、『金田一少年の事件簿』に登場する金田一一の後輩・佐木竜太も原作漫画ではその死が読者の心に大きなトラウマを残したキャラ。佐木竜太は、File:7「異人館ホテル殺人事件」にて、偶然にもトリックの手がかりを撮影したため犯人に絞殺されてしまう。

 佐木はそれまでの物語でレギュラー的立ち位置でストーリーを盛り上げていたキャラ。「絶対安全」だと思われていた主人公の身近な人物が死ぬという、容赦のない展開に驚いた読者は少なくないだろう。なお、これ以降は彼に外見のそっくりな弟の竜二が「佐木2号」と呼ばれ金田一のサポートをすることとなった。

 対してアニメ版での佐木は同様の展開で犯人に襲われるが、意識不明の重体で病院へと搬送され、事件解決後に意識を取り戻し無事に生還する。よってアニメには弟の竜二はそもそも登場しなかった。

 漫画とアニメで生死の異なるキャラは、どうやらアニメでのみ生存というパターンが多いようだ。主人公に大きな影響を与える彼らだけに生きていてくれることは嬉しいが、漫画ではそれでもなお彼らを退場させなくてはならないという作者のこだわりがかいま見える。

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