■食べる人によって味が変わる!『夜の名前を呼んで』星ジャム

 最後に紹介するのは『夜の名前を呼んで』に登場するジャム。本作は『ハルタ』にて2020年から連載されている作品で、不安になると自分の周りを闇で包んでしまう病にかかった少女・ミラと、彼女の面倒を見る魔法医・レイのあたたかな日々が描かれている。グルメ要素はないファンタジー漫画なのだが、作中に出てくる“星ジャム”がとても印象的なのだ。

 星ジャムは空から降ってきた星を集め、長持ちさせるためにたっぷりの砂糖で煮詰めたものだ。煮込むときには、星を砕くようにザクザク混ぜるのがポイントである。キラキラしたジャムが完成したら、月の光に当てた瓶に詰めてできあがり。なんともロマンチックな食べ物である。

 星ジャムは食べる人の味覚に反応し、“その人にとって一番おいしい味”になるのだという。ちなみに砂糖は星と一緒に加熱することで甘みを失うため、ジャムとはいえ甘いとは限らない。しかもその時々の味覚によって味が変わるので、同じ人間が食べたとしても毎回まったくちがう味わいになることもありうるのだ。ファンタジーならではの設定で、想像するだけでウキウキしてくる。

 シャボン玉のようなフルーツ、厄除けにもなるソルベ、星を煮詰めたジャム……ファンタジー漫画に登場する食べ物は夢いっぱいだ。もちろん今回紹介した以外にも、魅力あふれる料理は数多く登場する。普通に美味しそうなものもあれば、一体どんな味がするのか想像がつかないものも。漫画を読みながらあれこれ妄想してみるのもまた楽しいものである。

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